トラベル&ライフ2024年8-9月号で訪れたアメリカ西海岸のカリフォルニア。そのシンボルとも言える都市のひとつにサンタモニカがある。サーファーやスケーター、クリエイターが集まり、ビーチリゾートとしても人気の場所。ロサンゼルスのダウンタウンから車でわずか20分ほど。カリフォルニアの象徴とも言えるこの場所を見たくて、少し足を延ばし旅してきた。
「これが桟橋?!」サンタモニカと言えば、太平洋に突き出した「サンタモニカ・ピア(桟橋)」が有名なのだが、その規格外の大きさに驚いた。全長は329mもあり、カフェやショップが連なり、車まで通れる。まるでひとつの"まち"だった。桟橋と呼ぶには巨大すぎる感じがするが、開放的な雰囲気を感じられるカリフォルニアらしい場所だった。
桟橋ではストリートパフォーマーが観客をにぎわせていた。人をかき分け覗いてみると、サッカーボールが彼の体の上で縦横無尽にダンスしている。磁石でもついているのかと思ってしまうほど体から離れない。華麗な技に感動したら、もちろんフィナーレには「チップ」を忘れずに。
サンタモニカは年に280日も太陽の日差しに恵まれると聞いていたから、勝手に青空を期待していた。「せっかくここまできたのに」と少し残念に思い曇り空を見上げていると星条旗の周りを鳩の群れが飛んでいく。その素敵な演出に、一瞬で気分が晴れてきた。
アメリカの繁栄に重要な役割を果たしてきた国道のルート66。8つの州をまたぎシカゴへと続く道の起点・終点の看板がサンタモニカにある。この国道は数々の映画、小説、音楽、アートにも登場するほど多くの人に愛されてきた。一度は廃線したものの、古き良きアメリカを感じられる「歴史的道路」として復活し、今では有名なロードトリップのコースとなっている。66歳の記念に旅する人も多いのだとか。
遊園地って桟橋に建てられるんだ...。引き潮になると、床面の支柱というのか、杭というのか、柱が現れ、桟橋の構造が見えてくる。荒波が来たら揺れるのではないかとヒヤヒヤしてしまうが、そんな心配は無用だろう。それにしてもこの大胆さは、アメリカらしい。
訪れたのは6月。日中は半袖でいいほどでも、海水に足をつけるとヒヤッとして温度はまだ低い。それを気にせず海で泳ぐのがカリフォルニアの人。水着の人が少ないのは、きっと「ノリ」で入ったのだろう。その場の気分で泳いじゃう、そんな開放的な姿を見るとこちらも楽しくなってくる。
カリフォルニアの港町には必ずあるクラムチャウダー。貝や魚肉、たくさんの野菜を煮込んだクリームスープだ。現地で学生をしていた頃はなかなか食べる機会がなかったけれど、今回は、ハンバーガーと一緒に頼んで大人買い。贅沢に土地のものを頬張って満足感に浸ってきた。
たくさんのぬいぐるみを抱え、肩を揺らしながら闊歩して桟橋を後にする男の子。まだ興奮冷めやらぬ様子で大きな声で歌っている。「やれやれ」と言った感じの父親は疲れ気味だったけれど、顔は満足気。充実した時間を二人で過ごしたに違いない。アミューズメントパークはこうでないと。
サンタモニカ・ピアを出ると巨大アートが目に止まった。そのインパクトの強い絵はホテルの壁画で、ストリートアートを代表するシェパード・フェアリーのものだった。あらゆる人種、どんな人も歓迎するこの地区のヒッピー精神や歴史、自然の美しさにインスピレーションを受けて描いたものらしい。カリフォルニアの空の下、絵からはみなぎるパワーが放たれていた。
気づくと空港に向かう時間が近づいていた。「もう少しだけサンタモニカに残りたい」と後ろ髪を引かれながら車に乗り込んだ。きっと、それくらい心残りがある方が、次の旅に繋がるのだろう。自分や大切な誰かの66歳の誕生日に向けて"ルート66のロードトリップ"を計画してもいい。また訪れる日を楽しみに、サンタモニカを後にした。