イタリア半島の西側、青い地中海に浮かぶフランスの島、コルシカ。ナポレオンの生まれ故郷としても知られ、自然豊かなこの島はバカンスでも人気なのだそう。今回は、島の北側にある海沿いの小さな街Ile Rousse(リル=ルッス)と、芸術家や職人の村として知られるPigna(ピーニャ)を訪れました。
パリから飛行機で約1時間半、ニースからは約40分、イタリアにほど近いフランスの島、コルシカ。コルシカはイタリア語、フランス語ではcorse(コルス)と呼ばれています。 今回行きはニース空港から、コルシカ島の北西にあるcalvi(カルヴィ)空港へ。帰りは南東にあるBastia(バスティア)空港からパリへ戻りました。
カルヴィ空港に到着後まず向かったのは、空港からタクシーで約30分の村、ピーニャ。
「CERAMICA」という陶芸のアトリエ兼ショップ
村に入ると、石造りの重厚な趣の建物と石畳の小道が入り組んだ歴史を感じる街並みで、中世ヨーロッパの世界に迷い込んだかのような気分に。ピーニャは、もともと廃村寸前だったそうですが、30年前くらいから芸術家や音楽家、職人が移り住み、今では村民のほとんどが職人や芸術家だといいます。
村を散策していると、目に入るのが色鮮やかな花々。そして風に乗ってふわっと漂う花の香り。白、ピンク、ブルーなど色とりどりの花が咲き誇っていて、石造りとのコントラストがとても素敵でした。どこを切り取っても絵になる風景。カメラを持ち歩き、撮影している観光客も多く見かけました。
至るところで見かけた壁のプレート。店名やアトリエ名などが描かれていますが、すべて陶器でできています。形、色、文字などすべてがかわいらしく、アトリエを訪ねてみましたが、今は注文が殺到していて大きなものは難しいとのこと。小さいサイズなら可能かもしれないとのことなので、機会があったらぜひお願いしたいです。
宿泊したホテルのレストラン
ピーニャはとても小さな村ですが、こぢんまりとしたホテル&レストランが点在しているので、宿泊もおすすめ。絵本の世界から飛び出したようなかわいい内装のホテルも多く、夢のような時間が過ごせます。レストランでは、地元食材を使ったランチやディナー、コルシカ島産のワインなどを楽しめました。
また、村には地元のはちみつやハーブ、チーズ、シャルキュトリーなどを扱うお店や、コルシカ在住の作家の作品を扱うギャラリー&ショップなども。ここならではのジャムやハーブティー、お菓子などはお土産にもぴったりです。
聖ドミニク修道院の中庭
今回は1泊したので、村の散策を終えたら、Couvent Saint-Dominique de Corbara(聖ドミニク修道院)へ。ピーニャからはタクシーで行くのがスムーズですが、今回はハイキング気分で山道を歩いて向かうことに。途中、日本では見かけないような珍しい花や木々も見ることができとても新鮮でした。
こちらの修道院では午後3時から修道院のガイド付きツアーに参加。フランス語なので内容はわかりませんが(笑)、普段は入れない部屋も見ることができますし、たくさんの花やハーブ、樹木が植えられた中庭を散策することもできます。昔から修道院ではさまざまな薬草を育て、それらから抽出したエキスや植物性オイルなどで石鹸やバームを作っていました。そんな修道院のレシピがフランスでは語り継がれています。ここでも小さな売店があり、はちみつやオイル、バームなどが販売されています。
修道院付近から見たピーニャの村
村ではとにかくたくさんの猫たちに遭遇。小道を散歩する猫、飲食店のテラスでおこぼれに期待する猫、自宅から出かけようとしている猫。どの猫も人懐っこくて、のびのびと暮らしている様子。幸せそうな猫たちを見ていると、それだけで癒されます。
リル=ルッスの街の中心地に面したビーチ
ピーニャを満喫した後向かったのは、海沿いの小さな街リル=ルッス。ピーニャからは車で15分ほどです。こちらはピーニャと比べると都会。観光地なので、通りには飲食店をはじめ、お土産屋さんや雑貨屋さん、スーパーなどが並びます。街と海がすぐなので、この街に滞在してのんびりと海遊びやショッピングを楽しむのもいいかもしれません。
ここで訪れてみたのは、土地ならではの食材や空気感を感じられるマルシェ。今回は時間がなく立ち寄れませんでしたが、近くでは蚤の市もやっていたそう。
ソーセージやハムなどのシャルキュトリー、たくさんの種類のチーズに、色鮮やかな野菜たちは、フランスらしい景色でした。チーズもハムも、はちみつも、いろいろと試食させてくれる太っ腹な生産者たち。ここでは日本人は珍しいようで、「Tokyoに行ったことあるよ」「初めて日本人に会ったよ」と、気さくに話しかけてくれました。地元の人たちと交流できるのも、こういったマルシェの醍醐味ですね。
最後に、コルシカ島の基本情報や今回の旅で得た豆知識をシェアします。
コルシカ島は中世ではイタリアの植民地でしたが、独立運動の末、フランス領になり現在に至るそう。島の真下には、イタリアのサルディーニャ島。そのせいか、街の空気感も人もイタリアに近い雰囲気を感じます。基本的にフランス語ですが、なかにはイタリア語を話す人や店名がイタリア語のお店もありました。
気候もカラッとしていて気持ちよく、陽射しは強いけれど湿度の高い日本より過ごしやすい。そして今回訪れて感動したのが、空気と水がとにかくきれいでおいしいこと。フランスをはじめ、ヨーロッパは硬水が基本ですが、コルシカ島の水は軟水。水道から流れる水も肌あたりがやわらかく、とても気持ちがいい!「美の島」と称される所以を肌で感じました。豊かな自然と石灰岩の地質が関係しているのかなと、帰国後もコルシカ島への関心が高まっています。
そして、コルシカ島を訪れるなら注意してほしいこと。
支払いのほとんどがキャッシュオンリーです(2024年7月現在)。スーパーや土産物屋さん、大きなレストランなどはカードが使えましたが、小さな雑貨屋さんや飲食店、タクシーもほぼクレジットカードが使えないので、キャッシュは多めに用意しておくことをおすすめします。リル=ルッスにはATMがいくつかあるのでおろすことも可能です。
また、島内の移動は電車やバスがありますが、やっぱり時間短縮にはタクシーが便利。とはいえ、街には空車は走っていないしタクシーアプリも対応していないので、ホテルや飲食店にお願いして電話で呼んでもらいましょう。
想像以上に素晴らしかったコルシカ島。自然豊かで人も優しくおおらかで、いるだけで心が穏やかに明るくなれる場所でした。今回は島の北側のほんの一部でしたが、違う季節にまた訪れたいと思います。フランスへ訪れる機会があれば、ぜひコルシカ島へも足を延ばしてみてください。