トラベル&ライフ2024年8-9月号の撮影で訪れたカリフォルニア。同じ州内でも海岸沿いと内陸では、全然違った表情を見せてくれるここは、ロードトリップが最高に楽しめる。移りゆく車窓からの風景、天気、風、匂い。本誌で掲載しきれなかったその美しい景色を写真とエッセイで紹介していく。
「After you.(お先にどうぞ)」カフェの入り口で、私の前にいた男性が笑顔でそう言って、私にドアを開けてくれた。そうだ、そうだ、そうだった!フレンドリーで心の余裕のあるこの感じ、これがカリフォルニア。バリスタの笑顔もたまらない。滞在初日の朝カフェから最高のカリフォルニア時間が始まった。
ドジャー・スタジアムの入り口付近に貼られていた看板群。昔のものなのだろうか、煉瓦の壁にかかった看板の、少し色褪せたカラフルでレトロな雰囲気が目を引いた。スタジアムを訪れた人は野球観戦とともに、こういったところも楽しめるから嬉しい。
ハンバーガーはアメリカの伝統食の一つだ、と勝手に思い込んでいる。カリフォルニアに住んでいた学生時代、何か特別なことがあれば、ルームメイトとよくこの"伝統食"でお祝いしたものだった。時が経ち、今こうして頬張ってみると、当時の楽しい思い出が蘇ってくる。
アメリカの都市部の人は健康志向の人がとにかく多い。雨が降っても、暑くても寒くても、早朝から走ったりビーチバレーをしたり、外では体を動かしている人ばかり。カーテンを開ける前から窓の外で雨音が聞こえたら布団にくるまってしまう自分は、まだまだ若輩者だ。
これも勝手な思い込みだが、アメリカでは老若男女「キャンディ」好きな人が多い。 アメリカでは、チョコレート、グミ、ロリポップやクッキーなど、甘いお菓子を総称で「キャンディ」と呼ぶ。専門店には、カラフルで可愛いものが並び、虫歯を気にせずむさぼりたくなってしまう。
「街中に野うさぎ!?」リスを見かけたことはあったが、ウサギもいるなんて驚いた。北米に生息する「ワタオウサギ」という種類で、森の中でしか見られないかと思っていた。まさか街で出会えるとは。尻尾を振って去る姿がたまらなく可愛らしかった。
こういうデザインのビルかと思っていた。建設中、何らかの理由でオーナー不在になったビルは、完成前にキャンバスになってしまったらしい。誰のものでもなく宙ぶらりんの状態になった時、あれよ、あれよと絵が描かれたという。高層ビルに大胆なミュラルアート。ロサンゼルスだからこそ見られる景色だ。
夏の北米の日の入りは遅く、天気の良い日は21時頃まで日が差している。明るさに身を任せて飲んでいると、あっという間に時間が過ぎてしまう。それもカリフォルニアらしかったりする。気持ちの良い西日を受けながらほろ酔い気分で過ごすのも、また旅の思い出になる。
燦々と降り注ぐ太陽の下、朝顔に似た花が道端で気持ち良さそうに咲いていた。その花にカメラをむけていると「ゴージャス!」と花に言って女性が通りすぎていった。褐色の肌にブレイズヘア、サングラスをかけて颯爽と歩いていく、そんなあなたもゴージャスよ、と心の中で言ってしまった。
シロップをかけなくても十分な甘さのパンケーキに、たっぷりのシロップをかけて食べる。これぞアメリカンダイナーのパンケーキだ。一口頬張ると、容赦ない甘さが口の中に広がる。いったん食べたら、味覚と脳は忘れられなくなる。カリフォルニアに来たら、一度はこの味を楽しんでほしい。
訪れた時は、ジャカランダと呼ばれる花が満開になっていた。南米原産の木で、19世紀頃にカリフォルニアに広まったとか。南カリフォルニアの初夏の風物詩で、その薄紫色が街並みを一層華やかにしていた。その淡い色と枝振りの雰囲気は、まるで日本の桜のよう。アメリカの卒業式の時期と重なるから、卒業生は記念写真をこの下で撮るのだろうか...。太平洋岸の海風を感じながら海沿いの街を満喫した後、次は砂漠地帯へと出発だ。
カメラと旅するカリフォルニア(砂漠地帯編)へと続く。
そのほかの取材こぼれ話と一緒にお楽しみください。