スウェーデン、ダーラナ地方の人口2,000人弱の小さな農村地区Stora Skedvi(スウェーデン語でストーラフェーヴィーと発音)。ダーラナ川の畔で、草原で家畜用の馬や羊、そして豚がのんびりと暮らしている静かな村で、観光客の姿は見当たりません。遠い昔から変わらないスウェーデンの原風景が広がるのどかな村です。
Photo/Skedvi bröd press
田園地帯の真ん中にあるのが「Skedvi bröd」という名前のクネッケブレッド工場。
Photo/Skedvi bröd press
工場の建物内には、生鮮食品や豊富な種類のチーズを扱う市場や高品質な無添加オーガニック食品を扱うショップ、そしてレストランが併設。開放的な雰囲気で、誰でも気軽に立ち寄れます。
Photo/Skedvi bröd press
クネッケブレッドとは、スウェーデンを代表するパンで、朝食から夕食まで幅広く食べられている国民食。日本人が想像する柔らかいパンではなく、ライ麦、酵母、水、塩で作られた質素なパン。味はしませんが、バターやチーズ、卵などをのせて食べたり、スープやじゃがいも料理とも相性が良く食べやすいのです。さらに、カロリーも低いのでダイエット中や健康志向の人々にもピッタリ。ダーラナへストが描かれたクネッケブレッドは、軽さとその可愛いパッケージでスウェーデン旅行のお土産品としても人気です。
冬が長く、乾燥したスウェーデンの気候に適していて長く保存できるため、常備食としても重宝するクネッケブレッド。ちなみにクネッケブレッドアカデミーのサイトによると、スウェーデンで100年以上食べられている硬いパンであるものの、現在稼働している工場の数はとても少ないのだそうです。ちなみに毎年2月19日は「クネッケブレッドの日」です。
Photo/Skedvi bröd press
話は逸れましたが、そんなスウェーデンを代表する伝統的なクネッケブレッド工場「Skedvi bröd」は小さな村で大きな存在感を放っています。工場の歴史は長く、1940年に工場が建てられ1960年代にパン作りを開始。その後、経営難による工場の存続危機や火災など度重なる苦難を乗り越えて、昔ながらの手法で一つ一つ手作りのパンを今日も焼き続けているのです。ちなみに工場が閉鎖危機の際、救世主となった人物の一人が、世界的に有名なABBAのメンバー、ベニー・アンデション氏なのだとか!
Photo/Skedvi bröd press
ベテランのクネッケブレッド職人が、選び抜いた薪で毎回火をつけ、400度になる年季の入った石窯の中で円形のパン生地15枚を素早く焼いていきます。燃え上がる石窯の炎の状態を確認しながら15枚全てが程よくパリパリな歯ごたえになるには熟練した技術が必要。職人が目と耳で焼き加減を見極める技術はSkedvi brödの伝統そのもの。
Photo/Skedvi bröd press
焼き具合により パン一枚一枚の色味が若干異なるのが手作りの良さ。焼きあがったら、数日間乾燥させ 一枚一枚確認して手作業で梱包作業を行う流れは昔から変わっていません。
Photo/Skedvi bröd press
パン職人の情熱と愛情がこもったSkedvi brödのクネッケブレッドは、現在地元のスーパーだけではなくオンライン注文によりスウェーデン全土、ヨーロッパ圏内、さらには海外にも販売されています。
Photo/Skedvi bröd press
併設されているレストランでは、こだわりの料理を提供。自家栽培の野菜や地元の農産物などをふんだんに取り入れた美味しい料理が愉しめます。日替わりランチメニューに加え、土曜日限定ランチメニュー、夕食メニュー、週末の夜はアラカルト、そして若手シェフによる本格的な肉料理と、幅広いメニューを用意。ワインやビールも豊富に取り揃えているのでお酒も飲めるのも魅力的。実はトリップアドバイザーでも評価の高い、上質な料理が食べられる穴場レストランでもあります。
Photo/Skedvi bröd press
春にはデザインマーケット、秋はオクトーバーフェスト、冬はクリスマスマーケットなど様々なイベントを開催。1年を通じてここは地元の人にとって憩いの場所なのです。
様々な逆境を乗り越えてきたSkedvi bröd。目まぐるしく変わり続ける時代の中で、この自然豊かな村の工場から今後もずっと変わらず、伝統的なクネッケブレッドが焼かれ続けることでしょう。