新米の教師と12人の子供たちが学び遊んだ海辺の小学校、母親と幼い子が自転車に乗って下っていく坂道、そして瀬戸内海を見渡せる小高い丘の上に立つパン屋・・・小豆島(香川県)は、数々の映画やテレビドラマの舞台となっている美しい島である。
オリーブ畑 ギリシャ風車 ©(一社)小豆島観光協会
小豆島は、温暖な気候に恵まれ「日本の地中海」とも称される瀬戸内海の東部、播磨灘に位置する。面積は169.86km²、瀬戸内海では淡路島の次に大きく、人口は約2万5千人。人々は素麺や醤油、ごま油、佃煮やオリーブ、といった古くから伝わる産業を大切に育て、独自の文化を守りながら暮らしている。
大自然と人々の暮らしが織りなす風景は数々の名作の舞台となり、多くの人を魅了してきた。
寒霞渓とロープウェイ ©小豆島総合開発株式会社
「寒霞渓(かんかけい)」は、小豆島で最も高い星ヶ城山(標高816m)と四方指(しほうざし)の間にある渓谷だ。今から約1300万年前の火山活動によってできた安山岩層や火山角礫岩層などの岩塊が地殻変動や風化・侵食によって、奇岩と崖地からなる絶景が生まれた。古代から景勝地として知られ、大正12年(1923年)に国の名勝、昭和9年(1934年)には日本で最初の国立公園(瀬戸内海国立公園)の景勝地に指定。
また、日本三大渓谷美のひとつとしても知られている。空、海、渓谷を一望できる日本で唯一のロープウェイに乗って空中散歩を楽しんだり、ハイキングをしたり、季節ごとに表情を変える絶景を存分に楽しむことができる。
エンジェルロード ©(一社)小豆島観光協会
海に囲まれた小豆島は、海の絶景も各所に点在している。その中で最も知られているエンジェルロード(天使の散歩道)は、1日に2回だけ干潮時に現れる砂の道。沖合の中余島までつながり、「大切な人と手をつないで渡ると願いが叶う」といわれている。エンジェルロードを渡る前にある弁天島には「約束の丘展望台」があり、エンジェルロードを一望。恋人たちが鳴らす幸せの鐘が響く中、海の透明度、砂の白さを実感することができるだろう。
中山千枚田 ©(一社)小豆島観光協会
人の手によって生み出された絶景も味わい深いものがある。小豆島のほぼ中央に位置する中山地区では、三方を山に囲まれた標高差約100mの傾斜地に約800枚もの棚田が広がる。中山千枚田として「日本の棚田百選」にも選ばれているこの風景は、南北朝時代から江戸時代中期にかけて作られたもの。畳一畳分ほどの狭いところもあり、機械もない時代に一段一段作り出していった先人たちの知恵と苦労が伝わってくる。
二十四の瞳映画村 校舎 ©二十四の瞳映画村
今や観光業は小豆島を代表する産業となっているが、そのきっかけとなったのが映画『二十四の瞳』だ。小豆島を舞台にした作品は大ヒットし、観光ブームが到来した。現在、小豆島田浦の岬に位置する二十四の瞳映画村ではその後制作された映画のロケ用に作られたオープンセットを公開。木造校舎、男先生の家、漁師の家、茶屋など、大正・昭和初期の街並みや佇まいが残り、作品の世界を楽しむことができる。
屋形崎夕陽の丘 ©(一社)小豆島観光協会
今もなお、数々の名作が生み出され続ける小豆島。心を揺さぶられたあの風景を探しに、また、懐かしさを感じる風景に癒されに、海を渡って訪れてみたい。