今年も3月11日に解禁になり、神奈川県相模湾の湘南しらす漁が始まった。兵庫県の淡路島や、愛知県の篠島など、しらすの産地はたくさんあるが、神奈川県しらす船曳網漁業連絡協議会(通称しらす協議会)に所属する漁業者が、相模湾のしらす船びき網漁で漁獲した生しらす及び加工品しらすは、湘南しらすと呼ばれ、全国的にも知られるブランドとなっている。
水揚げされた湘南しらす
しらすとは、生まれてから20~50日のイワシ類、アユ、ウナギ、アナゴなどの稚魚のことをいう。イワシ類などこれらの一部の稚魚は食用とされており、体長2~3cmほどで、頭は小さく体が細長く、体の表面にはほとんど色素がない。透きとおった白銀色をしているが、ゆでると白くなることからしらすと呼ばれるようになった。
相模湾は、富山県の富山湾や静岡県の駿河湾と並ぶ日本三大深湾で、水深1,000mのところもあり、そこには豊富な栄養分が集まっている。日本で獲れる約4,000種の魚のうち約1,300種の魚が獲れ、そのうち約300種が食べられるというから驚きだ。主にマイワシ、カタクチイワシ、ウルメイワシという3種類のイワシが漁獲されているが、湘南しらすのほとんどがカタクチイワシの稚魚。毎年春になると黒潮にのって相模湾にやってくる。
しらす漁の様子
しらす漁で最も大切なのは鮮度管理だ。相模湾は岸から少し離れるだけで急に深くなり、漁をするには十分な水深がある。わざわざ遠くまで行かなくても、各浜から出て目の前の漁場で操業し、漁獲から水揚げまで時間がかからないため鮮度を保つことができる。
「一艘曳き」しらす漁船
また、しらす漁には一隻の船で網を曳く「一艘曳き」と二隻の船で網を曳く「二艘曳き」がある。神奈川県のしらす漁業は「一艘曳き」で、「二艘曳き」と比べると漁獲量は少ないが、網を揚げる時間が短いので鮮度のよい状態で水揚げでき、一度に獲れる量が少ないため、網の中でしらすが傷まない。さらに、水揚げから氷締め、加工販売にいたるまで生産者が一貫して行っていることも高鮮度を保つ秘訣となっている。
釜揚げしらす 天日干し
水揚げされたしらすは、水揚げするとすぐに加工所で塩のみを加えて釜揚げされ、天日干しが行われる。しらすには、春、夏、秋に旬があり、その時のしらすの状態に合わせて、塩加減や、茹で時間、干し時間などを調整。一つ一つの工程をすべて手作業で丁寧に仕上げられた、釜揚げしらすはふっくらしっとりとしており、ちょうどよい塩加減で、優しい甘みが引き立てられている。
絶品獲れたての生しらすと江の島
こちらの釜揚げしらすは一年を通じて味わうことができるが、今の時期ぜひ味わいたいのが生しらすだ。新鮮な生しらすは、臭みがなく、つるつる、ぷるぷる。噛めばねっとりとした濃厚な味わいと甘みが広がる、一度食べたらやみつきになるおいしさだ。直売所では、釜揚げしらす、生しらすのほか、しらすピザや沖漬けなどの加工品も販売。また、湘南しらすを使用した料理が食べられる店もあるので、ぜひ現地に訪れてそのおいしさを堪能したい。
今、食べられるのは甘みが強い「春しらす」なのだとか。春本番、しらすを味わいに相模湾沿いの町を訪れるのもいいだろう。
※生しらすは毎年1月1日~3月10日は禁漁期間となっており食べることができないので注意が必要。