トラベル&ライフ2024年4-5月号の撮影で訪れた沖縄本島。豊かな自然を感じ、ここで育まれた独自の文化に触れてきた。本誌で掲載しきれなかったその美しい景色を、写真とエッセイで紹介していく。
強い日差しを浴びた大きなガジュマルの木に出会った。湿度を含んだ風に吹かれながらこの木を見ると、南国に来たと実感する。"精霊が宿る木"、"幸福をもたらす木" と言われているせいか、木に触れて深呼吸すると、なんとなく心が落ち着く。気持ちのいい沖縄の旅の始まりだ。
魔除け・守り神としてよく見かける沖縄のシンボル、シーサー。1対2体でみることが多いが、自動販売機の上に一匹だけの口の開いたシーサーがいた。単体のシーサーは口開きのものが多く「邪気を払って福を呼び込む」という意味をもつらしい。この自動販売機のジュースを買ったら、何かいいことがあるかもしれない。
撮影で訪れたガンガラーの谷の「ケイブカフェ」。自然が創り出した鍾乳洞の空間を生かした稀有な場所だ。撮影していると太陽の光がまっすぐ鍾乳洞の奥深くまで差し込んできた。ここでしか体験できない貴重な場所で、自然の神秘や美しさをただただ感じていた。
雨模様だった空は午後から晴天になり、青い海が木々の間から姿を見せてくれた。その気持ちいい景色にシャッターを切っていると人影が現れた。逆光で顔が見えず、最初は男の子かと思ったら地元の女性だった。「私の庭のようなこの砂浜を撮ってくれて嬉しいんよ。」思いがけない出会いは旅の宝物になる。
海辺に綺麗に咲く黄色い花。「ハイビスカスに似ているけど、"ユウナ"と言う花よ。」さっき出会った女性が教えてくれた。暴風林として植樹されることが多く、海沿いの彼女の家の前にも大きな木があった。朝に咲き、夕方には散る一日花。暴風から守りつつ、派手に咲いてパッと散る。なんだかとても潔くてかっこいい。
古酒と琉球料理のお店「うりずん」に行った時のこと。見慣れぬものが飾られていて、しばらく眺めていたら「ムーチーですよ。」とお店の人。月桃の葉で包んで蒸した餅のことで、旧暦の12月8日に健康・長寿を祈願して食べるのだそう。これは飾り物だが、琉球文化を知れて食して飲めて、"一石三鳥"のお店だ。
ホエールウォッチングで慶良間諸島に向かう途中、船上からパラセーリングの姿が見えた。沖縄の豊かな自然を感じながら飛ぶのは気持ちいいに違いない。以前、自分も他の場所でしたことがあるが、鳥になったような気分になる。今度は沖縄の海でも飛んでみたい。
地球上で一番大きい生命体と言われるクジラを見るのはずっと夢だった。バズーカのような大きなレンズを用意し、前夜から興奮してあまり寝られずにいた。けれど、当たり前だが初のクジラ撮影で、かつ、たった1時間の海上滞在でブリーチ(海面上に躍り上がり着水する)姿を見られるわけがない。遠くに泳いでいくクジラの尾ヒレが「また来てね」と手を振っているように見える。そうだ、また会いに沖縄に来よう。心残りがあるほうが、また訪れるきっかけになる。
もう1つの沖縄取材こぼれ話と一緒にお楽しみください。