長野県の高遠城址公園、奈良県の吉野山と並び、日本三大桜の名所として知られる青森県弘前市の弘前公園。ソメイヨシノをはじめ、シダレザクラ、八重桜など52品種、約2,600本の桜が咲く様子は圧巻で、絶景を楽しもうと毎年多くの人が訪れる。
弘前城 天守
弘前公園は、江戸時代に弘前藩主津軽家の居城だった弘前城が基になっている。弘前城は、天正18年(1590年)頃に津軽地方を統一した弘前藩初代藩主・大浦為信(津軽為信)によって築城が計画され、二代藩主・津軽信枚により慶長16年(1611年)に落成。寛永4年(1627年)には五層の天守の鯱に落雷し、天守内部に保管していた武器や火薬に引火して、大爆発を起こしたという。それから約200年もの間天守がないままだったが、江戸時代後期の文化7年(1810年)に御三階櫓(ごさんかいやぐら)と称される現在の天守が完成した。
春陽橋
城内に桜が最初に植えられたのは正徳5年(1715年)のこと。藩士が京都からカスミザクラを持ち帰ったのが始まりといわれているが、現在のようにたくさんの桜が見られるようになったのは明治時代になってからだ。廃藩後、荒廃した城内を見かねた旧藩士の内山覚弥が明治13年(1880年)に桜20本を自費で植え、同じく旧藩士の菊池楯衛が明治15年(1882年)にソメイヨシノを1,000本寄贈し植栽。弘前城跡が公園として一般公開されるようになってからも桜の植樹活動は続き、明治34年(1901年)から36年(1903年)には大正天皇の結婚を記念して1,000本のソメイヨシノが植えられた。
さらに昭和31年(1956年)には、元市議会議員の福士忠吉がソメイヨシノ1,300本を寄贈。これらの桜は外濠を埋め尽くすように植えられた。
毎年開催されている「弘前さくらまつり」の前身となる「観桜会」が開催されたのは、大正7年(1918年)。大正時代からいち早く天守のライトアップなども行われ、夜遅くまで楽しめるイベントとして話題となり年々訪れる人も増えていった。長い歴史の中には戦争による開催中止、令和2年の新型コロナウイルス感染拡大防止のための開催中止などがあったが、「弘前さくらまつり」は現在も引き継がれ令和6年には104回目を迎える。
花筏と岩木山
「弘前さくらまつり」の見どころはとにかく多い。初めて弘前城に持ち込まれたカスミザクラのひこばえ(樹木の切り株や根元から出る若芽)が成長して花を咲かせる様子や、旧藩士が寄贈した日本最古級のソメイヨシノ、環境省が実施している全国巨樹巨木林調査により日本最大幹周に認定されたソメイヨシノなど、歴史や特徴のある名物桜が点在している。
中濠観光舟
また、和船に乗ってお濠から桜を楽しむ「中濠観光舟」、桜の花びらでお濠が埋め尽くされる「花筏」、ソメイヨシノの並木道を歩く「桜のトンネル」なども必見。天守に登って桜を一望するのもいいだろう。
西濠のライトアップ
夜には天守や名物桜もライトアップされ、エリア全体が明るく照らし出される。お濠に映った桜も美しく、辺りは幻想的な雰囲気に包まれ、昼間とはまた違った美しさを見せてくれる。
「桜守」と呼ばれる人々の手によって大切に守り育てられている弘前公園の桜。リンゴの剪定技術を応用した「弘前方式」で丁寧に育てられた桜はボリュームのある花を咲かせ、今年も訪れる人を魅了してくれる。
例年の弘前公園の桜の見ごろは4月下旬。今年の「弘前さくらまつり」は、2024年4月19日(金)~5月5日(日・祝)。夜間ライトアップは、期間中日没~22時まで。
※「弘前さくらまつり」のスケジュールや内容は、変更となる場合があります。お出かけ前に公式サイトでご確認ください。