トラベル&ライフ2024年4-5月号の巻頭特集「感動と癒しの島時間」では、"時間"をコンセプトに、沖縄で過ごす時間そのものが癒しになるアクティビティやカフェ、長い時間をかけて生み出され守られてきた伝統工芸、沖縄の滞在をより豊かにするホテルなどを取り上げた。
そのカフェで紹介したのが、恩納村にある「カフェギャラリー土花土花」。"絶景カフェ"として知られるカフェで、本誌ではその絶景にスポットを当てたが、ここでは絶景に勝るとも劣らない魅力を紹介したい。
「カフェギャラリー土花土花」がオープンしたのは2011年。陶芸家である玉田彰さんの工房を静かな環境に移すためにこの地を選び、2階にギャラリーとカフェを併設した。 2階の扉を開けてカフェに入ると、目に入るのは真っ青な海。木々の緑越しに見る大海原は爽快で、まさに"絶景カフェ"と呼ばれるにふさわしい景色を堪能できる。
絶景もさることながら、カフェの空間そのものの居心地の良さは格別なのだ。天井が高く、太い梁と柱が目を引く。店内に落ち着きと温もりをもたらすこれらの木材は宮崎杉で、建設する際にわざわざ宮崎県から取り寄せたという。テーブルは沖縄の木工作家・城間光男さんの作品で、存在感がありながら目立ちすぎない。
さらにランプシェイドやドアの取っ手、床にはめ込まれているタイル、洗面所の手洗い鉢など、随所に配された玉田彰さんの作品が華を添えている。もちろん、カフェで使われているカップやお皿も玉田彰さんの作品だ。一つひとつに思いを寄せて作り出した空間は、洗練されていながら肩ひじ張らず、また可愛らし過ぎない...絶妙なのだ。
メニューも見逃せない。国産大豆を使用した豆乳から作るケーキ、無農薬のゆずから作る手作りのゆず茶など、"口に入れるものだから"と素材を厳選し、体に良いものを全て手作りの自家製で提供している。それはお店にすれば決して"こだわり"ではなく、"普通"のこと。
お客様にどうしたら喜んでもらえるかを常に考え、テラスをガラス張りにしたら、真夏の暑い日でも、風の強い日でも絶景をお客様に楽しんでもらえるのではないかと考えを巡らせている。居心地の良さは、お客様に寄り添う真心から生まれている。
毎回、取材先で撮影して写真を掲載するのだが、使用できなかった写真は膨大で、泣く泣く掲載を諦めることが多い。今回は、惜しくも本誌には掲載できなかった表紙と特集の大扉(本誌P8-9)の写真を披露しよう。
まずは表紙。本誌で採用したのは紅型のタペストリー。沖縄が誇る紅型の伝統を守りながら現代の生活にあった作品を創作する道家良典・由利子さん夫妻の工房「紅型工房ひがしや」を訪ねて、撮影した写真だ。色とりどりの貝殻をモチーフにしたこのデザインはこの5月から日本トランスオーシャン航空のヘッドレストカバーにも使われる。あえなく涙をのんだもうひとつの候補写真は紅型のキーホルダー。モチーフはシーサーで、紅型の伝統文様も施されとっても愛らしい。
大扉(本誌P8-9)で最後まで迷ったのが、上の写真。おすすめの宿として紹介した「百名伽藍」の近くにある新原ビーチで撮影したもので、朝から曇り空だったが、「百名伽藍」の取材中から、太陽が顔を出してブルーの海と空の写真を撮影できた。緑の葉のトンネルを抜けると広がる海はとても美しい。
違うビーチでとった早朝の海を散歩するご夫婦の写真もお気に入りで、どちらも"とっておきの沖縄時間"が過ごせそうな予感がする...と思っている。