陽光きらめく5月にスペインでもっとも華やぐ町。それは南部アンダルシア地方にあるコルドバでしょう。ひと月の間に十字架祭り、パティオ祭り、フェリアと3つものお祭りが開かれて賑わうのです。今回は2012年にユネスコの世界無形文化遺産に登録されたパティオ祭りをご紹介します。
井戸や洗濯場も残っている昔の集合住宅のパティオ 写真提供=Turismo de Córdoba
コルドバの旧市街は細い道が迷路のごとく入り組みその脇に白壁の家が並ぶ、いわゆる日本人がイメージする南スペインの町です。簡素でなんということのない白い外壁の内側に隠れているのがコルドバ伝統のパティオ、すなわち中庭になります。基本的に建物、もしくは壁に四方を囲まれた屋根のない石造りの空間なのですが、そこを主に花で美しく飾るのがコルドバ流。そしてそれを愛でるのがパティオ祭りです。
個人宅の小さなパティオを見ることもできる 写真提供=Turismo de Córdoba
毎年パティオのコンテストが開催され、そこにエントリーしたパティオがお祭り時に公開となります。その数はおよそ50で、そのほかにコンテストには参加していないパティオもいくつか。パティオの中には、普段は個人宅でこの期間しか見ることができないところも多々含まれています。
中央に小さな噴泉のあるパティオも多い 写真提供=Turismo de Córdoba
ちなみにパティオのある家のつくりはローマ人がもたらしたと言われていますが、今のスタイルになったのはアラブ人の影響なのだとか。その特徴としては、花や果樹、絵皿などの装飾、噴泉、レンガや石畳の床、格子窓などが挙げられます。
パティオ祭りの楽しみ方はいたってシンプル。観光オフィスやホテルでパティオの場所が記された地図をもらい、それを手に見てまわるのです。地図はWebでも公開されていて、ダウンロードもできます。
白壁にブーゲンビリアの花が映える 写真提供=Turismo de Córdoba
全部で6つのルートがあり、特に人気のアルカサル・ビエホ地区(サン・バシリオとも呼ばれています)は混み合うので行列ができることも。同時に家の鉄格子窓とバルコニーのコンテストも開かれるので、パティオからパティオへと渡り歩く途中の道すがら目を楽しませてくれます。
よく手入れされ美しく飾られたパティオはため息もの。普段からどれだけ手間暇かけているかが伝わってきます。どこも入場は無料ですが、チップのお皿があることも。気に入ったパティオには少々の心づけを置きたいものです。
パティオ席があるレストランも 写真提供=Turismo de Córdoba
パティオ巡りの途中でお腹がすいたら、バルでコルドバの郷土料理のサルモレホ(ペースト状の冷製トマトスープ)やフラメンキン(生ハム入りロールカツ)、ラボ・デ・トロ(牛テールの煮込み)を味わってみてください。せっかくなので花で飾られたパティオ席のあるレストランでゆっくり食事を楽しむのもよいですね。夜にはコンサートやフラメンコのイベントがあるので、こちらもお見逃しなく。
キリスト教の大聖堂内に残るイスラム寺院の名残 写真提供=Turismo de Córdoba
ところで、コルドバの世界遺産はこのパティオ祭りだけではないのです。イスラム時代のモスクを改修してキリスト教の大聖堂として使われているメスキータを中心とした歴史地区、そして8㎞ほど郊外にあるイスラム時代の宮殿都市の遺跡メディナ・アサアラの2つの文化遺産があります。パティオ祭りと合わせて楽しまない手はないですね。
さて、2024年のパティオ祭り‐Fiesta de los Patios de Córdoba‐は5月2日(木)~12日(日)までの開催が予定されています。期間中は宿泊施設が混み合い料金も上がるので、早めに予約を入れることをおすすめします。コルドバの青い空と白い家、そして色あざやかな花々が織りなす風景に魅了されてみませんか?