河津川の桜並木
河津川の桜並木

一足先に春を感じる、河津桜

季節を感じる日本の旅
2024年01月15日
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国内旅行
旅行記

今年の大寒は1月20日。一年のうちでもっとも寒いこの時期に咲く桜があるのをご存じだろうか。河津桜は、静岡県河津町で生まれた早咲きの桜。今では、全国各地で楽しむことができるようになったが、発祥の地である河津町には約8,000本の河津桜が植えられ、見ごろを迎える2月中旬~3月初旬には町中がピンク色に染まる。また、開花時期には、河津桜まつりも開催され、絶景を楽しもうと多くの人が訪れる。

河津桜 河津桜 写真提供=静岡県観光協会

河津桜は、早咲きのオオシマザクラ系とヒカンザクラ系の自然交配種と考えられている。毎年1月下旬になると開花し、その後約1ヵ月間咲き続けるため、長期間楽しめるという特長がある。花の大きさは4~5cmほどとソメイヨシノより大きく、濃いピンク色の花は艶やかに美しく、満開時はもちろん、五~六分咲きでも十分な見応えがある。

「菜の花ロード」 「菜の花ロード」

「河津桜トンネル」 「河津桜トンネル」

河津桜の散策ルートはまずは河津川沿いの桜並木から。約4kmの川沿いに850本の桜が咲く様子は圧巻だ。途中、菜の花の黄色と河津桜のピンク色のコントラストが春らしい「菜の花ロード」や桜に包まれながら歩く「河津桜トンネル」のほか、「上河原の桜」「豊泉の桜」「音蔵の桜」といった銘木も点在。足湯に浸かったり、露店の桜餅を食べたりと、のんびりと歩きながら河津桜を楽しむことができる。

かわづいでゆ橋からの風景 かわづいでゆ橋からの風景 写真提供=静岡県観光協会

河津川にかかる7つの橋(浜橋、館橋、荒倉橋、来宮橋、豊泉橋、かわづいでゆ橋、峰小橋)から桜並木を望む風景もおすすめだ。同じ青空と川と河津桜の風景でも、橋ごとにそれぞれ違った趣がある。
時間があるのなら「涅槃堂」に立ち寄ってみたい。駐車場には銘木「涅槃の桜」があるほか、裏手にある桜見晴台からも並木道を見下ろすことができる。また、毎年河津桜まつりの開催期間にあわせて期間限定で「涅槃像」も一般公開される。

河津桜の原木 河津桜の原木

河津町役場近くには、河津桜の原木がある。これは、昭和30年(1955年)ごろ、河津町に暮らしていた飯田勝美氏(故人)が偶然発見した苗を植えたところ、昭和41年(1966年)に開花した桜の木だ。その後、学術調査では新種と分かり、この原木があることから昭和49年(1974年)にカワヅザクラ(河津桜)と命名された。飯田氏が大切に育てた桜は、昭和50年(1975年)には河津町の木に指定され、全国各地で美しい花を咲かせている。

ライトアップの様子 ライトアップの様子

夜には館橋から下流300m、「河津桜トンネル」、また、豊泉、役場などの銘木が18時~21時の間ライトアップされる。暗闇の中光に照らされた河津桜は華やかかつ幻想的で、昼間とは全く異なる趣。冬の澄み切った空気の中で楽しむ夜桜もまたすばらしい。

現在、河津町の河津桜は、1本ずつ地区の名前と番号がつけられ、枯れてしまったり、傷ついてしまった木は植え替えるなど各地区で管理しているのだという。また「河津桜守人の会」が剪定、消毒、施肥といった保護育成活動を行っている。河津町で飯田氏が偶然見つけ一人で育てた河津桜は、今や多くの人たちの手によって守り継がれている。

2024年の「河津桜まつり」は、2月1日~29日に開催される。

協力=河津町観光協会 文=磯崎比呂美
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