アルハンブラ宮殿のあるグラナダは外国人だけではなく、スペイン人にも大人気の観光地です。『Quien no ha visto Granada no ha visto nada』と韻を踏んだ古い諺があるほど。これは、日本でいう『日光を見ずして結構と言うなかれ』に相当します。イベリア半島におけるイスラム勢力最後の砦として栄えた残り香を500年以上たった今でも漂わせ、訪れる人を魅了します。今回はそんなグラナダ散歩のお話です。
スペインが誇るアルハンブラ宮殿の見学同様、グラナダに来たら欠かせないのが町歩き。 グラナダの醍醐味のひとつです。ここでは筆者がもっともオススメするアルバイシンコースをご紹介します。
細い道が入り組むアルバイシン地区(写真提供:グラナダ県観光局)
グラナダ最古の町並みが残るアルバイシン地区はアルハンブラ宮殿の向かいの丘に位置し、11世紀頃にイスラム勢力が造ったと言われています。迷路のように入り組んだ細道や白壁の家、カフェやバルのテラスがある広場など様々な顔を見せてくれるので、歩いていると次は何があるのだろうとわくわくが止まりません。このアルバイシン地区は、アルハンブラ、ヘネラリフェとともに世界遺産に登録されています。
アラブ茶屋ではミントティーやアラブ菓子、水煙草を楽しめる(写真提供:グラナダ県観光局)
では、早速歩き始めましょう。スタート地点のヌエバ広場からエルビラ通りに入りまっすぐ進みます。2~3分でカルデレリア・ヌエバ通りに着くのでそこを右折。ゆるい坂道の両脇には土産店やアラブ料理店が所狭しと並び、モロッコかどこかイスラムの国のスークに迷い込んだ錯覚に陥ります。スタートしたばかりですが、アラブ茶屋でミントティーを飲むのもいいですね。
エキゾチックなお土産店も多い(©スペイン政府観光局)
スークのような通りを抜けると住宅地になる
そのまま登って行くと、静かな住宅街に変わります。白壁に囲まれた細道を歩き、サン・ニコラス展望台を目指しましょう。
サン・ニコラス展望台からのすばらしい眺め(写真提供:グラナダ県観光局)
ここはアルハンブラ宮殿の全景を望むお約束の絶景スポットなのです。宮殿の後ろにはシエラ・ネバダ山脈の姿も。あまりの美しさにうっとりします。ライトアップされた宮殿も美しいのですが、夜は念のためタクシーやツアーで来ることをオススメします。
アーチをくぐり抜けてから振り返るとこんな光景
絶景を堪能した後はサン・ニコラス展望台を背にし、サン・セシリオ通りを進むと突き当たりに古い塔のようなものがあります。その右手にひっそりとアーチがあり、そこをくぐるとラルガ広場。この辺りも最近は観光地化されてきましたが、まだまだ生活感も漂っています。
ダーロ通りに向かって丘を降りるときは正面にアルハンブラ宮殿
ここからはパナデロ通りをまっすぐ進み、サルバドール教会の角を右折して丘を下ります。突き当りはそのまま道なりに左折し、鋭角に2回曲がりながらさらに下を目指します。あとはお好みの細道を見つけ、正面にアルハンブラ宮殿を見ながらダーロ通りに出ます。
この左手にアルバイシンの丘、右手にはアルハンブラの丘がある(写真提供:グラナダ県観光局)
この通りはアルバイシンの丘とアルハンブラの丘に挟まれており、ダーロ川に沿っています。古い建物や教会が並び川にかかる石橋も趣深く、スペインでもっとも美しい通りのひとつに数えられています。
この道を西にまっすぐ進むとサンタ・アナ広場に着き、そのまま進むとスタート地点のヌエバ広場に戻ります。ダーロ通りにある16世紀初め創設のサンタ・カタリナ・デ・サフラ修道院では修道女お手製のお菓子を売っているので、お土産にいかがでしょうか。
このコースはすたすたと歩いてしまえば1時間で充分なのですが、途中で写真を撮ったりお店を見たりすることを考えると2時間はほしいですね。時間がある場合は、コース周辺をもっともっと寄り道してみてください。きっとお気に入りの一角が見つかるはず。グラナダではアルハンブラ宮殿などの観光スポットだけで満足せず、町を歩いてその魅力を感じたいものです。
写真提供=スペイン政府観光局、グラナダ県観光局 www.turgranada.es
文・写真=田川敬子