Travel&Life2023年12-1月号の巻頭特集では「胸躍るシンガポール」と題し、シンガポールをエリアに分けて見どころやグルメを紹介した。そのひとつが、名門ホテル「ラッフルズ・シンガポール」の「ロング・バー」が発祥のカクテル「シンガポール・スリング」。
シンガポール・スリングが生まれたのは1915年。当時、女性は公共の場での飲酒が憚られていたため、女性も楽しめるように"お酒に見えない飲み物を"との思いから作られたという。そうした思いを知って改めてグラスに注がれたカクテルを見ると、可憐にも力強くも感じられる。
「ロング・バー」では今でも伝統のレシピでカクテルを作り続け、それを目当てに多くの客が訪れている。バーが開くのは昼12時。取材を終えたのはその5分ほど前だが、バーから出ると入り口はすでにオープンを待つ人で賑わっていた。左党は"昼飲み"も辞さないのは万国共通のようだ。
「シンガポール・スリング」は、基本的にはバーテンダーがシェイカーを振って作る。ただ、1日1,000杯は売り上げるという人気ぶりなので、注文が多くなると"助っ人"が活躍する。
カウンターの片隅にある緑色の機械がそうで、シェイカーをセットして右横にあるハンドルを回すと、シェイカーが上下に動いてカクテルができるという仕組み。ハンドルを回す時間はきっちり30秒。一度にシェイカーは6本セットできるので合計18杯が完成。リキュールやジュースなどの分量は人の手により、シェイカーを振るところのみ機械。とはいえ、ハンドルを動かすのは手動...。完全なオートマティックでないところに心を掴まれた。
シンガポールは個性豊かなミュージアムが多いのも魅力だ。そのひとつが、カンポン・ギラムにあるビンテージカメラ博物館。建物そのものが真っ白なカメラというユニークな外観が目を引く。
入り口になっているカメラのレンズ部分から中に入ると、世界の珍しいカメラが整然と並んでいる。世界最大のカメラのレプリカやスパイ用のカメラ、ピストルの形をしたカメラなど多岐にわたり、収蔵数はなんとおよそ1,000台にも及ぶ。
また、トリックアートでユーモアあふれる写真を撮影できるコーナーもあり、カメラ好きにはたまらないスポットだ。
最後に紹介するのはバードパラダイス。約400種3,500羽の鳥たちが暮らす鳥類公園で、そのうち約4分の1は絶滅危惧種だという。園内は10の展示ゾーンに分かれ、そのうち8カ所は放し飼いになっている。敷地は約170haと広々としているが、園内を巡る無料のシャトルバスがあるので、足に自信のないお年寄りやお子様連れの方も安心して回ることができる。また、施設のアプリをダウンロードすると、園内のどこにいるのか自分の位置を教えてくれるので、迷子になる心配もない。
歩き疲れたら、フラミンゴたちを眼下に望む抜群のロケーションの「クリムゾン・レストラン」でひと休みするのもおすすめ。食事はもちろんだが、本誌で紹介したアフタヌーンティーやタイガービールなどカフェとしての利用もできる。
プレゼンテーションと呼ばれるショーやインコたちへの餌やり、バックヤードツアーなどもあるので、休憩しながら1日たっぷり楽しもう。