ホーニマン博物館(Horniman Museum and Gardens)― ロンドンの観光名所としては、あまり聞き馴染みのない名前かもしれません。しかし、南東ロンドンのフォレスト・ヒルに位置するこの博物館とその美しいガーデンは、地元民には非常に人気があり、リピーターも多い地域に根ざした施設なのです。2022年には、「Art Fund」(アート関連施設に対して芸術・美術品の調達資金援助を行う英国のチャリティ団体)のミュージアム・オブ・ザ・イヤーに選ばれ、10万ポンドの賞金を獲得しています。
博物館の歴史がスタートしたのは1890年代。お茶の貿易で財を成したホーニマン家が有する邸宅内に、「サリー・ハウス・ミュージアム」として開館しました。ミュージアムは、1901年に博物館専用の建物をオープンしてリニューアル。オーナーである紅茶商人、フレデリック・ホーニマンの名を冠した「ホーニマン博物館」としての再出発となりました。
「世界をフォレスト・ヒルにもたらす」というミッションをかかげ、世界中からコレクションを集め続けたホーニマン。その意思を継いだホーニマン博物館はいまや約35万点ものアイテムを有し、人類学・自然史・楽器などの幅広いコレクションで名高い博物館となっています。
地上階にあるメインの展示エリアは、ナチュラル・ヒストリー・ギャラリー。地元フォレスト・ヒル地区のシンボルともなっている巨大なセイウチをはじめ、数々の動物の剥製や標本などで生物の進化や生態が学べます。
1,300点以上もの楽器を集めたミュージック・ギャラリーは世界的にも名をはせており、楽器の展示数では英国一を誇っています。壁一面に展示されているのは、世界中から集められ、カテゴリー別に並べられた楽器の数々。雅楽の楽器や日本製シンセサイザーなども含まれています。陳列されている楽器の詳細を読みつつ、その音を聞いてみることができるインタラクティブな「サウンド・テーブル」はとても人気があり、順番待ちができることもしばしばです。
ワールド・ギャラリーに展示されているのは、アフリカ、アメリカ、アジア、オセアニア、ヨーロッパの各大陸から、時代を問わず集められた3千を超えるオブジェ。北アメリカ大陸の先住民や、北極圏に暮らす人々の衣装をはじめ、異なる文化、異なるさまざまな生活様式を目の当たりにすることで、人類の創造性や対応能力などについて学ぶことができます。
そして家族連れに大人気なのが、ミニ水族館(有料)です。こぢんまりとした水族館には15の水槽があり、イギリスの池の住人であるカエルから、クラゲ、タツノオトシゴ、ロブスター、フィージーの珊瑚の海で見られる熱帯魚たちまで、こちらも幅広い種類の生物たちに出会うことができます。
ホーニマンの広大なガーデンは、エリアごとにそれぞれ違った魅力があります。以下にその一部をご紹介しましょう。
●ピクニックをする人も多い広い草原「メドウ・フィールド」
●羊、ヤギ、アルパカ、ウサギなどの動物に会える「アニマル・ウォーク」
●色とりどりの蝶が舞う「バタフライ・ハウス」(有料)
●大きな鉄琴など屋外に置かれた楽器で遊べる「サウンド・ガーデン」
●花の満開時の姿は圧巻の一言!「サンクンガーデン(沈床園)」(2023年10月現在は補修工事のため閉鎖中)
また、バンドの生演奏などのイベントが行われることがあるバンドスタンド前の広場では、毎週日曜日にマーケットが開かれています。扱われているのは、地元産の新鮮な野菜や果物、パン、ケーキ、さまざまな料理の屋台、服、アクセサリー、工芸品、などなど。博物館への訪問と同時にマーケット体験もできて、一石二鳥です。
ウェディング・レセプションの会場としても使われるレンタル可能なコンサバトリー
子供に優しく、家族連れに大人気のホーニマン博物館は、館内・敷地内とも清潔感にあふれ、設備も整っています。豊富なメニューと高いクオリティを誇るカフェは、キッズメニューやデザートも充実しています。おすすめは博物館のシンボル、セイウチの絵を施したチョコレートクッキー!来館記念にぜひお試しください。セイウチグッズはミュージアムショップにもいろいろと揃っています。
また、飲み物やスナックは、アイスクリーム・スタンド、バンドスタンド前のキオスクでも購入できます。アイスクリームやコーヒーを片手に、ホーニマンのガーデンでピクニックを楽しんでみるのはいかがでしょうか。
Horniman Museum & Gardens
所在地:100 London Road, Forest Hill, London SE23 3PQ
入場無料(一部施設、特別展・企画展を除く)
開館時間:10:00~17:30(12/24~26を除く)
ガーデン開園時間:07:15~19:30(日・祝日08:00~。12/25は休園)
アクセス:ナショナルレールまたはオーバーグラウンドForest Hill駅より徒歩5~10分
バス(176, 185, 197, 356, P4)Horniman Museumバス停下車
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