3年間の期間限定 太宰府天満宮の仮殿

にほん再発見の旅
2023年10月16日
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国内旅行
旅行記

参道を抜け、池にかかる3つの橋を渡って心身を清め、楼門をくぐると驚くような建物が現れる。屋根の上に森が載っている、これまでに見たことのない斬新なデザイン。周囲の自然と調和した社殿は神々しく、穏やかな美しさに癒される。これが約3年という期間限定の太宰府天満宮の仮殿だ。

楼門 楼門

福岡県太宰府市に位置する太宰府天満宮は、学問・文化芸術の神として広く知られる菅原道真公(天神さま)の御墓所の上に築かれ、その御神霊を祀る神社である。道真公を祭神として祀る天満宮の中でも全国約1万社の総本宮であり、日本で唯一「菅聖庿(かんせいびょう)」として称えられ、毎年多くの参詣者が訪れる。

道真公は昌泰4年(901年)に藤原氏の策謀により大宰権帥に左遷され、延喜3年(903年)に謫居の地において生涯を終えた。その遺骸を牛車に乗せて進んだところ、牛が伏して動かなくなり、これは道真公の御心によるものだと、その聖地に御遺骸を葬り、その後祠庿が創建されたのが天満宮の始まりだ。

御神牛 御神牛

太宰府天満宮では、道真公が生まれた日、亡くなった日ともに25日であることから、25年ごとに式年大祭が行われている。そして令和9年(2027年)は、道真公が亡くなってから、1125年という節目の年であることから、今年5月から約3年間にわたって124年ぶりに御本殿の大改修を開始した。その間参拝者を迎えることになったのが、御本殿前に建設された仮殿だ。

飛梅 飛梅

デザインと設計は国内外で活躍する建築家の藤本壮介氏が担当。コンセプトは「太宰府天満宮周辺に広がる、豊かな自然が御本殿前に飛翔し、仮殿としての佇いを作り上げること」。道真公を慕って梅の木が一夜のうちに太宰府まで飛んできた飛梅(とびうめ)伝説から着想を得ているという。

仮殿の屋根の上には、梅だけでなく樟、紅葉、桜を含め60種類の植物が植えられ、まるで森が浮いているようだ。周辺環境ともみごとに調和し、季節や天候によってさまざまな移ろいを楽しむことができる。

仮殿の中には、御本殿の伝統的な垂木を模したルーバー状の天井、空と屋根の森が見える天窓など見どころも豊富だ。また、御本殿同様広さにゆとりがあり、御祈祷する場合も靴のままで上がることができるほか、スロープを設け、より多くの人が利用できるよう配慮されている。

内部の御帳(みとばり)と几帳(きちょう)はファッションブランドのMame Kurogouchi、音響監修はサカナクションの山口一郎氏率いる株式会社NF、照明は面出薫氏率いる株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツが担当。令和を代表するクリエイターたちが集まり手掛けた仮殿は、令和という時代を映したこれまでの御本殿とは異なる感動を与えてくれる。

紅葉

協力・写真提供=太宰府天満宮 文=磯崎比呂美
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