トラベル&ライフ2023年10-11月号の巻頭特集は、「アドベンチャーツーリズム」をテーマに長野県・松本と鹿児島県・屋久島の旅を紹介した。
「アドベンチャーツーリズム」とは、「自然」「アクティビティ」「文化体験」の3つの要素のうち、2つ以上を満たす旅のこと。屋久島の旅は、「sankara hotel & spa 屋久島」を拠点にし、白谷雲水峡のトレッキングと屋久島の集落巡り、そして屋久杉の工芸品を取り上げた。
屋久杉工芸品は、屋久島で育つ樹齢約1000年以上を誇る屋久杉で作られるもので、鹿児島県の伝統工芸品に指定されている。取材に向かったのは、屋久島空港に隣接する「杉の舎」。
暖簾をくぐると、店内にはテーブルや置物、盆、器、アクセサリーなどさまざまな工芸品が並んでいる。
「屋久杉工芸の材料になるのは、江戸時代に切り倒されて残った土埋木や風倒木など。現在は新しい屋久杉を伐採してはならないので、材料はとても貴重です。材料が減っていることもあり、以前は座卓や壺など大きなものが作られていましたが、今は少しでも材料を無駄にしないように、スプーンや箸、アクセサリーなど小さなものがよく作られるようになりましたね。一輪挿しなど、日常生活に溶け込める品々が人気を集めています」と話すのは、「杉の舎」で屋久杉工芸品を作る渡辺 重さん。
「杉の舎」が手がける工芸品は、屋久杉の曲がりや節など、自然の形を活かしているのが特徴だ。目を引いたのが、あえて木の曲がりを残している箸。箸はおみやげに人気がある商品でもある。
本誌では紹介しきれなかったが、実は箸作り体験もあるので、さっそく挑戦した。
箸作りで使う道具。一番左の2本の木材を削って箸を作る
まずは材料選びから。色や形、細さ、曲がりなどが異なる屋久杉が用意されているので、その中から好きなものを選ぶ。ノミの使い方や作業の工程の説明を受けたら、さっそくスタート。最初に箸の表と裏を削る。
ノミで削っていく
初めは恐る恐る削っていたせいか、力がうまく入らずなかなか削れない。その様子を見ていた渡辺さんからの「ノミは柄の先端を手で押すようにすると力が入ってうまく削れますよ」とのアドバイスがあり、少しずつしっかりと刃に力が伝わるようになってきた。すると、だんだん楽しくなって思いきりがよくなってくる。削りすぎに注意しながら先端に向けて次第に細くなるように削っていく。
ウズクリで箸の正面を磨く
正面、後ろを削ったら、今度は左右を削り、箸先が正方形になるように形を整える。その後、面取りをして箸に丸みをもたせ、最後に「ウズクリ」という道具で磨いて木目を浮かせたら完成だ。リボンで結んでもらった箸を見ると、いっそう愛着がわいてくる。
削りかすは袋に入れてくれるので、欲しい人は持ち帰ることができる。木屑を集めると、ふわっと杉の良い香りが広がってきた。江戸時代から生き続けている杉の香りはほんのりと優しく、時を超えて癒してくれる。屋久島の旅の思い出にもおすすめの体験だ。