太平洋に面したリマ市バランコ区は、都会的な感性を大切にするスノッブや、若きアーティストが集うオシャレでモダンなエリア。もともとは小さな漁村でしたが、19世紀末に区として整備され始めたことをきっかけに、リマの富裕層や外国人たちがこぞってセカンドハウスを建てるようになりました。
古き良き時代に建てられた瀟洒な屋敷を利用したホテルやレストラン、アンティークショップなどが集まるバランコは、ボヘミアンの街として海外からの旅行者にも人気のエリアになっています。
その一角にあるのが、「Dédalo Arte y Artesanía(デダロ アルテ・イ・アルテサニア/以下:デダロ)」。格子窓が美しい白亜の建物を利用した、バランコを代表するアートギャラリーです。
デダロのオーナーは、マリア・エレナ・フェルナンデスさん。イタリア・フィレンツェで美術と文学を学んだ彼女は、多種多様なアーティストの作品を一堂に集めたギャラリーを作ってみたいという夢を抱いていました。1992年ペルーに帰国したマリアさんはさっそくリマ市ミラフローレス区に小さな店を借り、デザインジュエリーの販売を始めます。しかしその2週間後、マリアさんの店のすぐ近くでテロリストによる爆破事件が起こりました。当時のペルーは暴力の時代と呼ばれ、テロ組織による都市部への攻撃が日々激しさを増していた頃でした。
ミラフローレスを離れたマリアさんは自宅のガレージで細々と仕事をつづけていました。しかし、ギャラリーを作るという夢をあきらめることはありませんでした。それから4年後の1996年、ついにマリアさんは絵画のように美しいバランコの建物に移ることができたのです。
デダロには経験豊かなマリアさんのお眼鏡にかなった、700人以上ものアーティストの作品が展示されています。店内に一歩足を踏み入れると、そこにはありとあらゆる色や形、素材があふれ、まるでアートの迷宮に迷い込んだかのよう。
食器類から陶器の置物、絵画、ジュエリー、ニット、バッグ、家具など、ユニークなオリジナル作品が所狭しと置かれています。ペルーの若きアーティストたちにとって、デダロは世に出るための登竜門でもあります。
小部屋をつなぐ通路の壁にもたくさんのアートが。どこもかしこも個性的な作品であふれているのにそのひとつひとつがとても見やすく、その計算しつくされた配置には脱帽というほかありません。
ペルーの大自然が生み出す風景や色をヒントに作られる、高級ウールブランド「アマノ」の毛糸。ベビーアルパカ100%を始め、ピマコットンやシルク、ウールなどを織り込んだ個性豊かな毛糸が並んでいます。いずれも手に吸い付くような滑らかさで、そっと触れるだけで幸せな気持ちにさせてくれます。
ギャラリー内部のギャラリースペースでは、ペルー人アーティストのモニカ・ヒンツェによる「Luces para el Desierto(砂漠の光)」と題した個展が開催されていました。
デダロの奥にあるオープンカフェでは、サンドイッチやサラダ、ピザなどの軽食や飲み物、スイーツをいただくことができます。また、ペットフレンドリー(ペット同伴可)なことから、地元の愛犬家御用達のカフェにもなっています。
ひよこ豆のお団子ファラフェルとフムスが乗った野菜たっぷりのサラダ。さっぱりとしたヨーグルトソースとよく合います。
マリアさんはとあるインタビューで「デダロで扱う作品の多くは現代アーティストがデザインしたものですが、先祖伝来の技術を受け継ぐ職人たちによって作られています。そうすることでペルーにあふれる価値ある素材を活かしたり、伝統的なものを守ることができるのです」と語っていました。
才能あふれるペルーのアーティストを発掘しその可能性を内外に発信する一方で、伝統を守りつつ常に創造性や革新性を追い求めつづけるマリアさん。
彼女の夢が詰まったデダロは、自分らしさを表現してくれるオブジェに出会えるとっておきの空間です。
■Dédalo Arte y Artesanía/デダロ アルテ・イ・アルテサニア
住所:Paseo Sáenz Peña 295, Barranco Lima, Perú