吾妻連峰を縫うように走る。車窓から見えるのは赤や黄色に色づく木々と青空。カーブを曲がるたびに現れる絶景に驚かされる。秋ならではの柔らかな日差しと爽やかな風も気持ちがいい。時折現れる山並みや渓谷、奇岩、沼などのビュースポットに立ち寄りながら、ダイナミックな自然の息吹を感じる爽快ドライブだ。
福島県の磐梯吾妻スカイラインは、吾妻連峰を縦走する平均標高1,350m、全長28.7kmの山岳道路である。紅葉の名所としても知られ、見どころポイントの標高が異なることから、9月下旬~10月下旬までと長期間にわたって紅葉を楽しむことができると人気を集めている。
中でも、「吾妻八景」(白樺の峰、つばくろ谷、天狗の庭、浄土平、双竜の辻(そうりゅうのつじ)、湖見峠(うみみとうげ)、天風境(てんぷうきょう)、国見台)は、磐梯吾妻スカイライン沿線に広がる絶景ポイント。美しい景色に感動した作家の井上靖が名付けたことでも知られている。
浄土平
磐梯吾妻スカイラインの中で最も早く紅葉が始まるのが、磐梯吾妻スカイラインのちょうど中間地点にある標高約1,600mの浄土平だ。一切経山(いっさいきょうざん)の火山噴火により生成された火山荒原の中に位置する浄土平は、9月下旬から10月上旬に色づき始め、福島のシンボル吾妻小富士、未だ噴煙を上げている一切経山の雄姿とともに、美しい紅葉が楽しめる。駐車場や公園内の自然を紹介する浄土平ビジターセンター、レストハウスなどが整備されているので、車を停めてゆっくりと登山や散策ができるのもうれしい。
天狗の庭
次に紅葉するのは標高約1,400mの「天狗の庭」だ。大きな岩が点在し、天狗が舞い遊んだという伝説が残る景勝地だ。10月上旬から中旬にかけて、吾妻小富士の斜面が赤や黄色に染まる様子は圧巻だ。
つばくろ谷
10月中旬から下旬に紅葉するのは、標高約1,200mのつばくろ谷だ。かつてイワツバメが飛んでいたことから、作家の井上靖によって名付けられた。つばくろ谷にかかる長さ約170mの不動沢橋から覗き込む風景がすばらしく、遠くに福島市街地が広がり、谷底までは約80m。色とりどりの紅葉に染まる木々の間に白い流れを見ることができる。
その近くには白い樹皮が特徴のダケカンバ、ブナ、クヌギ、ナラなど落葉樹の樹海が広がるビュースポット白樺の峰もあるので、立ち寄ってみたい。
天風境
そのほか、浄土平から南、土湯温泉方向へと進めば、磐梯山、安達太良山という2つの山が2匹の竜のように見えることから名付けられた双竜の辻、猪苗代湖、秋元湖、小野川湖、桧原湖が一望できる湖見峠、山肌を覆う木々の間から幕滝が覗く天風境、遠くに会津盆地を望み、夕日の美しい国見台が点在。それぞれに特徴があり、赤く色づいた景色を堪能することができる。
国見台
もはや全国的にも紅葉スポットとして知られる磐梯吾妻スカイライン。かなり混雑することが予想される。おすすめの時間帯は早朝。朝焼けに染まった紅葉はさらに美しさを増し、またゆっくりと絶景を楽しむことができる。
※紅葉の見頃は気候により前後する場合があります。