ペルー ノスタルジックな香り漂うタベルナ

海外現地ライター便り
2023年08月31日
カテゴリー
海外旅行
旅行記

ペルーの首都リマの新市街、ペルー独立の雄ホセ・デ・サン・マルティン将軍が"Pueblo Libre"(プエブロ・リブレ=自由の町の意)と名付けた歴史ある区に、130年以上の歴史を持つワイナリー直営の老舗タベルナ(居酒屋)があります。

その名は、「Antigua Taberna Queirolo(アンティグア・タベルナ・ケイローロ)」。1877年にイタリア・ジェノバから移住してきたケイローロ一族が経営する、古き良き時代の面影を残すタベルナです。

プエブロ・リブレにヨーロッパ調の平屋を構えたサンティアゴ・ケイローロ氏とその家族は、まず食料品や保存食、ワインを扱う食品雑貨店を開業しました。3年後の1880年、リマの穏やかな気候に着目した一家はブドウの栽培に着手し、ワインとピスコ(ペルー特産のブドウの蒸留酒)の製造を開始。こうしてペルーを代表するワイナリー、ボデガ・ケイローロが誕生し、その後同じ場所にアンティグア・タベルナ・ケイローロがオープンしました。この店には、心血を注いだ自慢の酒だからこそ、選りすぐりの料理とともに味わってもらいたいというケイローロ氏の想いが込められています。

タベルナ

20世紀半ばに一家がリマ南部のカニェーテに住まいを移した後も、食品雑貨店を改装した作業場とタベルナはプエブロ・リブレで営業を続けました。ペルーにおける出発点として一家の歴史が色濃く残る作業場には、自宅のセラーまたは贈答用にワインやピスコを購入する人が途切れることなく訪れます。

タベルナ 店内

5mを優に超す高い天井や磨き上げられた太い梁、明り取りの窓が時代を感じさせる店内。大理石を天板に使ったテーブルや天井の照明も、そのほとんどがオープン当時のままです。壁にはケイローロ一家の家族写真のほか、19~20世紀初期のリマの街並みを伝える写真が所せましと飾られており、飽きることがありません。

タベルナ カウンター

カウンター奥には天井まで届く重厚なバックバー、他にもリマに現存するもっとも古い電話機とレジスターが良好な状態で保存され、訪れる者の郷愁を誘います。

代替文

オレンジ色の温かく柔らかな光が落ち着いた空間を演出するタベルナ・ケイローロには、親子2代、3代にわたって通い続ける地元の人も多いそう。居酒屋といってもイギリスのパブのように朝から夜まで通しで営業しているため、幅広い年代のお客様がそれぞれ都合の良い時間に来店します。

クリオージャ料理

同店で提供するのは、奇をてらわない正統派のクリオージャ料理。クリオージャとは植民地生まれのスペイン人のことで、彼らは両親や祖父母が持ち込んだ欧州文化を継承する一方、ペルー人としての誇りも抱いていました。そんなクリオージャたちが旧大陸と新大陸の食文化を融合させつつ生み出してきたのが、クリオージャ料理です。

近年世界的な注目を集めるペルー料理とは、クリオージャ料理を始めアンデスやアマゾンの郷土料理、イタリア人や中国人、日本人などの移民が伝えた各国の食文化が生み出したさまざまな料理の総称であり、バラエティ豊かなペルー料理は南米随一の美食とうたわれています。

サングチェ・デ・ハモン・デ・ラ・カサ

ここに来たらぜひお召し上がりいただきたいのが、Sánguche de Jamón de la Casa(サングチェ・デ・ハモン・デ・ラ・カサ)。自家製ロースハムとサルサ・クリオージャ(タマネギのレモン和え)を丸いバゲット生地のパンに挟んだサンドイッチで、しっとり柔らかなハムの塩味とシャキシャキとしたサルサ・クリオージャの酸味が、舌の上で絶妙なハーモニーを奏でます。

19世紀の面影を今に留める店内と確かな味が評判を呼び、世代を超えて愛され続ける昔ながらのタベルナ・ケイローロ。
リマを訪れたら、ぜひこの歴史あるタベルナでゆったりとした時間をお過ごしください。

Antigua Taberna Queirolo/アンティグア・タベルナ・ケイローロ
住所:Av.San Martin 1090 Pueblo Libre, LIMA

文・写真= 原田慶子
このページのトップへ