南信州で生まれた高級梨「南水」

にほんグルメ探訪
2023年08月31日
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瑞々しくシャリシャリとした食感とすっきりとした甘みが人気を集める梨。この時期になると、「幸水」「豊水」「二十世紀」「新高」「新興」などが店頭に並び、さまざまな味わいを楽しむことができる。なかでも、高級梨として知られる「南水」は、長野県の南信農業試験場で生まれ、平成2年(1990年)に品種登録された比較的新しい品種だ。

南信地域一体は古くから梨の栽培が盛んで、初めは「二十世紀梨」が栽培されていたが、「二十世紀梨」の前に収穫可能な早生品種として「新水」を栽培。昭和40年代には糖度が13%程度と甘く、酸味もある「新水」が中心となっていた。「新水」は県外で育てると250gなのに対して、県内では300~350gと大きく育つという特性があったが、あまり日持ちせず病気にも弱かったため、昭和48年(1973年)から新たな品種の開発が始まった。

梨畑 梨畑

交配したのは「新水」と約450gという大玉で貯蔵性も高い「越後」。「新水」や「幸水」に負けない味を求めて何度も調査を行った結果、重さ580g、糖度14%、味は極上の梨が完成した。名前は、南信農業試験場の「南」と新水の「水」をとって「南水」に。南信や南アルプスの清涼なイメージ、全国にはばたく品種になってほしいという思いが込められているという。現在、「南水」は長野県内における栽培面積が広がり、「幸水」と並ぶ主要品種に、全国では6番目の品種に成長している。

袋掛けの様子 袋掛けの様子

「南水」の魅力は、高糖度、大玉、そして常温で1ヵ月、冷蔵で3ヵ月、氷温庫なら6ヵ月保存が可能という貯蔵性が挙げられるが、その滑らかな肌(表面)も見逃すことはできないだろう。「南水」は肌が弱いため、「幸水」「豊水」などには行わない、袋掛けを一つひとつ丁寧に行っている。手間と時間をかけ大切に育てられた「南水」は、今や甘く、大きく、そして美しい高級梨として知られ、贈答品などにも用いられている。

つるつるの肌が特徴 つるつるの肌が特徴

出荷時期は通常の梨よりも少し遅く毎年9月の中旬から。都内でも9月から10月にかけて店頭に並ぶ。ジューシーで口いっぱいに甘みが広がる「南水」は、キンキンに冷やすのではなく、甘味を存分に味わうために食べる前に冷やして食べるのがおすすめだ。

「南水」が生まれた南信地域は、天竜川に沿って河岸段丘が広がり、朝晩の寒暖差が大きいため、梨をはじめりんごや柿など、糖度の高い果物が採れることでも知られている。この秋、「南水」をはじめ、おいしい果物を求めて南信州を訪れてみるのもいいだろう。

協力・写真提供=JAみなみ信州 文=磯崎比呂美
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