鳴門海峡の大きな渦潮(写真提供:徳島県立 渦の道)
鳴門海峡の大きな渦潮(写真提供:徳島県立 渦の道)

世界最大級、鳴門海峡の渦潮

にほん再発見の旅
2023年08月10日
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国内旅行
旅行記

大鳴門橋の下で、ゴーッという音を立てながらぐるぐると回る渦が現れては消え、消えては現れる。大きさは大小さまざま。小さな渦同士がくっついて大きくなったり、大きな渦が小さく分かれたり。刻々と表情を変えるダイナミックかつ爽快な風景に圧倒される。

本州と四国の間に位置する鳴門海峡は幅が約1.3km、瀬戸内海と紀伊水道の干満差によって激しい潮流が発生し、大潮のときには潮流の速さが時速20km以上にもなることから、イタリアのメッシーナ海峡、カナダのセイモア海峡とともに「世界三大潮流」の一つと呼ばれている。鳴門の渦潮は、この激しい潮流が発生することによって起こる自然現象だ。春と秋の大潮時の渦潮は最大で直径20~30mにも及び、その大きさは世界最大ともいわれている。

潮流によって発生する渦潮 潮流によって発生する渦潮(写真提供:徳島県・(一財)徳島県観光協会)

鳴門海峡の中央部を流れる潮流は本流と呼ばれ、水深が約100mあり抵抗なく流れる。一方浅瀬になっている本流の両岸は流れが穏やかだ。渦潮は本流と両岸の流れの境目辺りで発生。本流に両岸の穏やかな流れが引き込まれて発生すると考えられている。

また、渦潮の発生は潮流を起こす潮汐が関係しているため、いつでも見られるものではない。潮流の流れが最も早い時間帯に迫力のある渦潮が見られるが、潮が流れていない時間には見ることができないので、事前に「潮見表」で時間を確認しておくといいだろう。

観潮船が行き交う鳴門海峡 観潮船が行き交う鳴門海峡(写真提供:徳島県・(一財)徳島県観光協会)

渦潮を見るには、船、大鳴門橋遊歩道「渦の道」、展望台という3通りの方法がある。より間近に渦潮を楽しむ場合はやはり観潮船に乗るのがおすすめだ。
船は淡路島と鳴門から出ており、淡路島の南あわじ市福良から出航するのは「うずしおクルーズ」の大型帆船型クルーズ船(定員500人)。船上スタッフのガイドつきの所要60分で、クルージングも楽しめる。

鳴門からは、「高速観潮船うずしお汽船」の小型船(定員86名)と「うずしお観潮船」の大型観潮船「わんだーなると」(定員399名)と水中のうずしお観察ができる小型水中観潮船「アクアエディ」(定員46名・要予約)が出ている。鳴門から出る船は所要時間が20分~30分。大型の船は揺れが少なく、高いところから見下ろすので渦潮が見つけやすい。一方、天候によっては揺れたり、海水がかかることもあるが、小型の船は海面から近いので迫力満点の渦潮を楽しむことができる。

「渦の道」
「渦の道」(写真提供:徳島県立 渦の道)

ガラス床
ガラス床(写真提供:徳島県立 渦の道)

大鳴門橋遊歩道「渦の道」は、鳴門海峡に架かる大鳴門橋の車道下に造られた海上遊歩道だ。全長450mの遊歩道では潮風や波音を感じながら爽快な海上散歩が楽しめる。展望室にあるガラス床をのぞけば、45m下に鳴門海峡が広がり、渦潮や行き交う船を一望。真上から見ることができるのは「渦の道」ならではだ。

「エスカヒル・鳴門」 「エスカヒル・鳴門」(写真提供:徳島県・(一財)徳島県観光協会)

また鳴門公園には鳴門山展望台、千畳敷展望台、孫崎展望台(孫崎灯台)、お茶園展望台といった展望台があり、大鳴門橋や渦潮が一望できる。中でも「エスカヒル・鳴門」は、高低差34m、全長68mのロングエスカレーターで一気に展望台まで登ることができると人気。展望台からは、鳴門海峡と大鳴門橋だけでなく、晴れた日には、和歌山県や小豆島までを見渡すことができる。おみやげコーナーもあるので、ゆっくりと過ごしたい人にはおすすめだ。

いくつも発生する小さな渦潮(写真提供:徳島県・(一財)徳島県観光協会) いくつも発生する小さな渦潮(写真提供:徳島県・(一財)徳島県観光協会)

月の引力、潮の満ち引きによって発生する世界最大級の渦潮。自然が生み出すダイナミックかつ不思議な風景は、多くの人の心に残り、江戸時代には浮世絵師・歌川広重も『六十余州名所図会「阿波 鳴門の風波」』にその様子を描いている。

協力=(一社)鳴門市うずしお観光協会、徳島県立 渦の道  文=磯崎比呂美
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