トラベル&ライフ2023年8-9月号の巻頭特集「麗しき、オクシタニー地方」では、フランス・トゥールーズ、カルッソンヌ、アルビの3都市を中心にその魅力を紹介した。ここでは、本誌では紹介しきれなかった見どころのひとつ、世界遺産のミディ運河を取り上げたい。
ミディ運河は、トゥールーズを流れ、大西洋に河口を持つガロンヌ川と地中海に面するトー湖を結ぶ運河で、その距離は約240km。支流を含めると総延長はなんと約360kmにもなるという。
運河の建築が始まったのは1667年。当時、大西洋から地中海に物資を運ぶためには、イベリア半島を大回りするルートしかなかったうえ、ジブラルタル海峡を通る際にはスペインに通行税を支払わなければならなかった。その状況を打開しようと、塩税の徴収を務めていたピエール=ポール・リケが運河の建築を発案。実に30年近い歳月を費やし、1694年に完成した。
閘門(ロック)や水路橋、トンネルなど328の建造物が点在し、高度な土木技術を駆使した運河は建築美と景観美を兼ね備えるだけでなく、物流の時間短縮と経費削減を実現し、経済発展に大きく貢献した。19世紀になって鉄道が敷かれると、運河は物流という役割を終えて衰退するも、現在は水辺の美しい景色を楽しむ観光客を乗せた遊覧船で賑わいを見せている。
出発を待つ遊覧船
チケット売り場
ミディ運河クルーズを楽しもうと、カルカッソンヌ駅の近くの乗り場へ向かった。チケットを購入して停泊している船に乗り込むと、40~50人乗りくらいの船はほぼ満席で賑やか。定刻になり、船がゆっくりと滑りだすと、すぐに最初の見せ場・閘門だ。
閘門での水位調節は見もののひとつ
閘門は水量を調節するための水門で、河川や運河など水位の高低差が大きなところに設けられている。前後を閘門で仕切られた水面を昇降させて船を行き来きさせる装置だ。ゆっくりと前後を閘門で仕切られた閘室と呼ばれるところに船が入ると、水位の調節が始まる。徐々に水位があがり、前方の運河と水位が同じくらいになると船は再びゆっくりと進んでゆく。
美しい景色も見どころ
発案者のリケは景観美にもこだわったというだけに、遊覧船から見る景色はとても美しい。運河に沿ってプラタナスやイトスギが植えられ、緑の並木が清々しい。途中、先ほどまで散策していたカルカッソンヌを象徴する城壁も見えた。
遠くに城壁が見える
今回はカルカッソンヌで乗船したが、トゥールーズでもミディ運河クルーズは楽しめる。また、ランチやディナー付きなど多彩なコースがあるので、旅の行程に合わせて楽しむのもおすすめ。
取材協力=オクシタニー地方観光局(Destination Occitanie)www.tourisme-occitanie.com
オード県観光局(Aude Pays Cathares)www.audetourisme.com
カルカッソンヌ観光局(Carcassonne Tourisme)www.tourisme-carcassonne.fr
フランス観光開発機構(Atour France)www.france.fr/ja