早朝、キスゲ平の霧降高原レストハウスから小丸山の展望台を目指して天空回廊を歩き始めた。高低差は240m、そして階段なんと1,445段という回廊は、整備された階段とはいえ十分な体力が必要だ。ニッコウキスゲの群生を楽しみながらの1時間弱のハイキング。途中、展望台で写真を撮影したり、高山植物の名前を調べたり、休憩をとりながらゆっくりと進む。歩き始めて30分ほどして振り返ると、眼下には、ニッコウキスゲの群生の向こうに雲海がどこまでも続く絶景が広がっていた。
ニッコウキスゲの群生
栃木県日光市の北方、赤薙山(あかなぎさん)斜面に広がる高山植物の宝庫・霧降高原。特に標高1,300m~1,600mにかけて広がる高原・キスゲ平は、ニッコウキスゲの群生地として知られている。開花時期の6月中旬から7月ごろには、ニッコウキスゲが一斉に咲く様子を一目見ようと、全国から多くの人が訪れる。
ニッコウキスゲ
ニッコウキスゲの正式名称は「禅庭花(ゼンテイカ)」。日光の群落が有名だったことからニッコウキスゲが一般名となったが、日光地方の固有種ではなく、日本各地の高原や産地の草原に広く分布している。地域によって呼び名が異なるのもおもしろい。高さ60~80cmの多年草で、10cmほどの黄色い大きなラッパのような花を3、4個咲かせる。朝開花すると夜にはしぼんでしまう、一日限りの花だ。
キスゲ平では、ニッコウキスゲの花が標高の低い麓から山頂に向かって順に咲く。開花期間は1ヶ月ほどと長いので、何度訪れても違った風景が楽しめるのも魅力だ。
天空回廊
かつてキスゲ平はスキー場だった。そのため、リフトに乗って上からニッコウキスゲが咲く様子を楽しんだという人も多いのではないだろうか。けれども、スキー場は平成16年に閉鎖。リフトも22年に廃止され、現在は天空回廊が整備されている。階段が1,445段もある天空回廊は健脚者向けだが、中腹までは階段ではなく遊歩道でのんびりと散策できるのもうれしい。
スキー場だったころは、毎年ゲレンデの整備のために刈払いが行われていたが、草原の維持のために毎年秋に刈り払いを実施。また、美しいキスゲ平を保持するために、適切な草原管理法も研究するほか、ニッコウキスゲ捕植活動や外来植物の駆除といった活動を行うことで、美しいキスゲ平を保っているという。
オヤマリンドウ
アカショウマ
オノエラン
アキノキリンソウ
標高の高いキスゲ平は、高山植物の宝庫だ。春から夏にかけては、100種類を超すさまざまな種類の花々を楽しむことができる。また、ビンズイ、ノビタキ、イワヒバリ、カッコウ、ツツドリ、アマツバメといった野鳥に出会うことも。雲海を見るのならば、頑張って早朝に訪れるのがおすすめだ。その日の気象条件によるので、運がよければ見ることができるだろう。
雲海
豊かな自然の息吹を感じる霧降高原キスゲ平。今年も美しく幻想的な賑わいのシーズンがやってくる。