オランダの「ハイネケン」は、1873年にヘラルド・A・ハイネケンが創業したビールメーカーです。家族経営で始まった醸造所はいまや、オランダを代表するグローバル企業に成長し、世界192カ国で300種類以上のブランドを販売しています。2022年のビール生産量は約257億リットルで、収益はおよそ287億ユーロにのぼり、ビール業界で世界2位の市場シェアを誇ります。
アムステルダムの中心部にあるハイネケン・エクスピリエンスは、ハイネケンの歴史やビールの製造工程を学ぶことができるミュージアムです。1867年に建設されたハイネケンの最初の醸造所を改装したもので、実際に使われていた原料貯蔵サイロや、発酵タンクなどを見学できます。エントランスホールでは、壁や天井にあしらわれた1万本以上のボトルに目を奪われます。
館内を巡るツアーは1時間半ほどで、まずは資料からハイネケンの歴史や製法を学び、ホールで発酵タンクを見学します。マルチメディア技術を駆使した展示も多く、自分がビールとして醸造され、消費者に届けられるまでの工程を体感するイマーシブアートや、オリジナルラベルの作成など、さまざまな仕掛けが用意されています。
ハイネケンビールは澄み渡るような金色をした、バナナのような香りのするピルスナーです。原料は大麦、ホップ、水のみで、副原料はいっさい使用していません。麦芽100%の深いコク、ホップの爽やかな苦味と甘みのバランスは、19世紀に自社開発されたA 酵母によって生み出されています。いくつかのスポットでスタッフが、ビールの原料や製造工程について説明してくれます。
1. 創業者のヘラルド・A・ハイネケンは、世界で初めて醸造所に品質管理ラボを導入したり、下面醗酵を採用するなど、最高品質のビールを製造するために献身的に努力しました。
2. 1875年のパリ国際海事展覧会で受賞した金賞のメダルは、ハイネケンビールのラベルにデザインされています。
3. 創業当初の陶器ボトルから、現在のロングネックまで、歴代のボトルも展示されています。二代目社長のヘンリー・P・ハイネケンの時代に、品質を維持したままの瓶詰めに成功し、輸出が増加しました。
4. グリーンボトルに赤い星は、1950年代の広告担当アルフレッド・H・ハイネケンのアイディアです。「Heineken」のロゴタイプも、最初の「H」以外を小文字にして丸みをもたせ、「e」を傾けてスマイルに見せるなど、親しみやすく生まれ変わりました。
発酵タンクが並ぶホールは圧巻です。タンクの中を覗いたり、サンプルバルブに触れたりと、特別な体験ができます。レトロなインテリアも美しく、アーチ窓のステンドグラスには幻想的な光が漂います。銅製のタンクは、不快な香りのもとになる硫黄化合物を除去するなど、ビールの風味づくりに大切な役割を果たします。かつてはこのホールで醸造されたビールが、世界へと旅立っていきました。
ツアーの最後はハイネケンビールで乾杯です。ハイネケンのビール造りへの情熱、こだわりの原料や製法などを学んだ後に味わうビールは格別です。晴れの日にはルーフテラスからアムステルダムを一望でき、夏の観光におすすめです。ハイネケン・エクスピリエンスは、「ヨーロッパ産業遺産の道」のアンカーポイントにもなっています。ヨーロッパの産業史にも刻まれた、ハイネケンの150年の物語をぜひ堪能してみてください。
ハイネケン・エクスピリエンス Heineken Experience
所在地:Stadhouderskade 78, 1072 AE Amsterdam
アクセス:アムステルダム中央駅よりトラム24番で11分Marie Heinekenplein下車徒歩2分
営業時間:日~木10:30-19:30, 金・土10:30-21:00 無休
料金:21ユーロ~ (ツアーのオプションにより料金が異なります)
※掲載の情報は変更となる場合があります。