江戸時代からほとんど変わることなく残る町割り(道路の位置や幅)、江戸時代末期から昭和前期に建てられたさまざまな様式の建物が建ち並ぶ。当時の面影を残す商家や旅館の中に入れば、江戸時代から昭和に作られた美しいひな人形がおもてなししてくれる。
茨城県桜川市で行われる「真壁のひなまつり」が今年も開催される。
真壁の町並み
桜川市真壁町の真壁を中心とする地域約17.6haは伝統的な建物が数多く残り、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。真壁の歴史は古く5世紀の清寧天皇の時代まで遡り、中世には真壁氏が真壁城を置いた。江戸時代には町の中央に真壁陣屋が置かれ、明治・大正期まで経済と文化の中心地として発展していった。
昭和50年代より歴史的建造物の取り壊しが目立つようになると、町並み保存のため平成11年(1999年)から登録文化財制度を活用して104棟もの建造物の登録を行い、桜川市(当時の真壁町)は登録文化財の町として注目されるようになった。
高久家(石田縮緬組)
「真壁のひなまつり」が始まったのは、平成15年(2003年)のこと。「寒い中、真壁に来てくれる人をもてなしたい」そんな思いから町中に有志がおひな様を飾っていると、次第に町の人たちも自主的にお雛様を飾りはじめ、最終的には40軒におひな様が飾られ、大盛況だったという。
有志達は「おひな様を通して、和の文化・和む心・人の和が広がってほしい」という思いに"和の風"と名づけ、次の年からも徐々におひな様を飾る人は増え、今では、約160軒の家がおひな様を飾り、観光客も多く訪れるようになったという。
伊勢屋旅館
真壁のひなまつりの見どころはとても多い。特に国の登録有形文化財の建物の中にひな人形が展示される様子は昔ながらの雰囲気があり、明治中期に料亭「勢州楼」として知られた「伊勢屋旅館」では豪華な座敷飾りが出迎えてくれる。現在は旅館として営業を続けており、食事も楽しめる。この時期だけの限定メニューの「弥生の風」はとても人気だ。
西岡本店
また、西岡本店の中では、さまざまな作家が作品を展示しており見応えも十分。高久家住宅では、石田縮緬組が手作りのつるしびなを展示するなど、各所で趣向をこらしたおもてなしが行われている。その他、食事処や菓子店なども点在しているので、1日たっぷりと楽しむことができる。重要伝統的建造物群保存地区を歩きながら、ひな人形を楽しみ、古の歴史に思いを馳せるのもいいだろう。
和の風流し雛
今年の「真壁のひなまつり」は2023年2月4日~3月3日に開催。子どもたちの成長を祈る行事「和の風流し雛」は、3月3日に山口川で行われる。