五月川の渓谷が白やピンク色に染まり、甘い香りに包まれる。まだまだ寒さの厳しい2月中旬。寒空の下、月ヶ瀬梅林では梅が美しく開花しはじめ、いち早く春の訪れを感じさせる風景が広がっている。
奈良県奈良市月ヶ瀬尾山とその周辺に広がる月ヶ瀬梅林は、渓谷沿いに約1万本の梅が立ち並ぶことから「月ヶ瀬梅渓」とも称され、多くの人に知られてきた梅の名所である。この地は古くから紅花染めに使用する材料である烏梅の生産地で、最盛期の江戸時代には約10万本の梅が植えられていたが、20世紀になると烏梅は衰退し、食用などの栽培に移行。また梅の観光名所として知られるようになり、大正11年(1922年)には、日本政府が初めて指定した名勝のひとつに選ばれた。
一目八景
月ヶ瀬梅林は、さまざまな見どころが点在し、自然や歴史を満喫できるウォーキングコースがある。例えばメインの駐車場から少しきつめの坂や階段を10分ほど登ると「一目八景」に。坂道を登り切った先には美しい梅の花と渓谷美を一望できる絶好のポイントだ。名勝月瀬梅林の石碑などもあるので、ゆっくり休憩しながら散策が楽しめる。
「一目八景」を後にして道沿いに歩くと、約500mにわたって梅の花が咲き誇り、その向こうにきらきらと輝く川の流れる「帆浦梅林」へ。ここは月ヶ瀬梅林のメインの観梅道。ポスターやパンフレットでも紹介されている絶景ポイントで、月ヶ瀬梅林ならではの風景が広がっている。
天神梅林
体力に自信のある人は、月ヶ瀬梅林の中でも高台にある「天神梅林」へ足を延ばしてみよう。広大な敷地に一面の梅林という圧巻の風景が広がっている。全国から集められた約40種270本の梅が植えられている品種園「梅林公園」、月ヶ瀬梅林の起源の地とされる「真福寺」や「尾山天神神社」にも隣接しており見応えも十分だ。最後は、つづら折れの坂道「代官坂」を下って、「奈良市月ヶ瀬梅の資料館」へ。
月ヶ瀬梅林×白雪ふきん
「奈良市月ヶ瀬梅の資料館」は、月ヶ瀬の自然や文化などの情報を発信している資料館である。1階にある地元特産品の販売コーナーでは、国の名勝指定100年を記念して月ヶ瀬梅林と白雪ふきんがコラボレーションしたふきんを発売中。月ヶ瀬に貴重な収入をもたらした園生姫が描かれた、かわいらしいふきんはお土産にもぴったりだ。
1万本の梅が咲く月ヶ瀬梅林
毎年、2月中旬~3月中旬にかけて見頃を迎えるという月ヶ瀬梅林。さまざまな品種が植えられ、また標高差のある梅林では見ごろも異なり、「咲き始め」「5分咲き」「見頃」などそれぞれの風景を楽しむことができる。2023年2月12日(日)~3月26日(日)には梅まつりを開催。この時期何度訪れても新しい感動に出会えるスポットである。