大ぶりで肉厚な「明石鯛」の焼鯛
大ぶりで肉厚な「明石鯛」の焼鯛

鯛、蛸、穴子 明石の「まえもん」

にほんグルメ探訪
2022年12月28日
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古くから縁起が良いとして知られる鯛は、日本人にとって祝いの席で欠かせない魚だ。結婚式やお食い初め、そしてお正月など、たびたび鯛を味わう機会がある。そんな中でも特別な鯛として知られているのが「明石鯛」だ。

東二見漁港
東二見漁港

明石浦漁協セリ市
明石浦漁協セリ市

「明石鯛」は明石海峡近隣の漁場で漁獲される真鯛のこと。明石海峡は、プランクトンやエビ・カニなど魚にとって栄養が豊富な漁場である。また、激しい潮流にもまれることで、身の引き締まった魚が育ち、約100種類もの魚が水揚げされているという。これらすべての魚は明石の「まえもん」と称されている。
「まえもん」とは、目の前の海でとれた魚のこと。「前の浜で獲れたもの」、「前のもの」が訛って、「まえもん」とよばれるようになったとも言われている。

明石の「まえもん」の美味しさの秘密は、育った環境のためだけではない。水から出した魚の頭を一瞬で手かぎを刺して脳死させる「活け締め」、脊髄に沿って走る神経の中へ針金を指して魚の死後硬直を遅らせる「神経抜き」といった、伝統的な技によっておいしさと鮮度が保たれ、東京や大阪などへも届けられているのだ。

身が引き締まった「明石鯛」 身が引き締まった「明石鯛」

明石の「まえもん」の中でも最も知られる「明石鯛」は、たこ、あなごと並ぶ明石三大名物の一つ。そのおいしさは高級料亭等から長年にわたり重宝され続けてきた。けれども、偽物が流通したことから平成20年(2008年)に、「明石鯛」を水揚げする6つの漁業組合が800g以上の明石で獲れた鯛に商標タグを取り付けることを決定。正真正銘、まぎれもない本物の味が楽しめるようになった。

身の質や脂の乗りの良い「明石鯛」は、刺身や塩焼き、鯛めし、鯛茶漬けなどさまざまな味わいで楽しめる。いずれもおいしいが、祝い事に登場する塩焼きは、肉が厚く、甘味と旨味が広がりまさに絶品。見た目も華やかに祝いの席を盛り上げてくれるだろう。

獲れたばかりの「明石だこ」
獲れたばかりの「明石だこ」

茹でだこ
茹でだこ

明石海峡の潮流に鍛えられたマダコ「明石だこ」は、足が短く太いのが特徴。柔らかながら歯応えと噛めば噛むほどにあふれ出る旨味が特長だ。たこ焼き、たこ天、たこぶつなど、生から茹でまで、極上の味わいが楽しめる。さらに地元では保存食として、干しダコにもされている。軽く炙り、細かく切って炊き込む「タコ飯」は古くから受け継がれてきた浜の味として知られている。せんべいなどの名産品などはおみやげにもぴったりだ。

明石産のあなご
明石産のあなご

ふっくらとした焼きあなご
ふっくらとした焼きあなご

また、肉厚で脂がのった明石産のあなごも絶品。明石では、300g以上の大きなあなごは「デンスケ」と呼ばれ、「デンスケ」より少し小さいサイズのあなごが最もおいしいと言われて珍重されている。特にふっくらと焼き上げ、甘辛いタレで仕上げた焼きあなごは、しっかりとした旨味がありながらあっさりとした味わいが特徴。店により味付けも異なるので、好みの味わいを探すのもいいだろう。

獲れたばかりの魚介類を鮨で味わう贅沢 獲れたばかりの魚介類を鮨で味わう贅沢

その他、さまざまな「まえもん」が楽しめる明石。魚介類はやはり旬の時期に楽しむのが一番。高級料亭が求めるおいしい魚介類を楽しみに、ぜひ明石を訪れてみたい。

写真・協力=(一社)明石観光協会 文=磯崎比呂美
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