寺と地域の活性化に取り組む「おおま宿坊 普賢院」

トラベル&ライフ 取材こぼれ話
2022年12月15日
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国内旅行
旅行記

おおま宿坊 普賢院

トラベル&ライフ2022年12-1月号の巻頭特集「鳥取の松葉がに、大間のまぐろ」でまぐろを味わったのは、青森県大間町「おおま宿坊 普賢院」。夕食は赤身、中トロ、大トロのまぐろをメインに手の込んだ料理が膳を彩り、朝食には精進料理が並ぶ。部屋は山小屋をイメージしたといい、太い梁が目を引く落ち着いた空間。

おおま宿坊 普賢院

サンルームもあり、瞑想用の椅子が置かれるなど、これまでの宿坊のイメージを一新している。ここではその宿坊を開いた院代の菊池雄大さんについて紹介したい。

菊池さんはお寺の次男として大間に生まれた。だが、当初は僧侶になるつもりはなかったという。その気持ちが一転したのは、2011年に起きた東日本大震災だった。当時、東京に上京していたが、大地震の速報を受けて、すぐさま地元に戻りボランティア活動を行った。

「避難所で袈裟をまとったお坊さんが膝を突き合わせて、避難している方々のお話をじっくりと聞いているのを目にして、その姿に感動したのが出家したきっかけです」

僧侶になる決意を固めた菊池さんは、永平寺で2年間修業を積み、さらに東京、北海道のお寺で修行を経て2018年に宿坊を開いた。宿坊を開いたのは、寺の収益を上げて檀家の負担を軽減することと、寺を存続させるためだ。
また、地域の活性化と親しみやすいお寺を目指した取り組みも行っている。そのひとつが、「寺社フェス」だ。年1回開催されるイベントで、大音量でジャズを流し、屋台を出店したり、流しそうめんをしたり、楽しい企画を実施して地元の人たちが集う場を作っている。 楽しそう!と思うと同時に、人生の最期を迎えた時に馴染み深い場所で弔ってもらえることを羨ましく思った。

津軽のパワースポットと鬼の民話の里を訪ねて

巌鬼山神社の本殿 巌鬼山神社の本殿

中には鬼のお面や絵などが奉納されている 中には鬼のお面や絵などが奉納されている

本誌でも紹介した青森県弘前市にある巌鬼山神社は、岩木山神社の元宮であり、岩木山の山岳信仰の発祥の地と言われている。

樹齢1000年を超える大杉は県の天然記念物 樹齢1000年を超える大杉は県の天然記念物

青森屈指のパワースポットとしても知られ、境内にそびえる樹齢1000年を超える「大杉」は見もの。

鬼神社

鬼伝説が残る鬼沢地区では、鬼は優しい存在だ。そのため、鬼神社の扁額に書かれている「鬼」という文字にはツノ(「鬼」という漢字の最初の一画めの「ノ」)がない。

鬼神社

「昔、鬼が鬼神堰を作ってくれたおかげで、村で稲作ができるようになったという言い伝えがあります。ですからここの鬼は悪い鬼ではないんです。撫牛子ないじょうし八幡宮の鳥居の鬼は、鬼神社に修行にきて、良い鬼になって帰ったともいわれています」と話すのは、鬼神社氏子総代長の藤田湖一さん。鬼沢地域では、藤田光男さんが会長を務める「歴史と伝統の里 鬼沢の会」を中心に、鬼伝説の伝承や地域文化を保存し、後世に引き継いでいくための活動を展開している。

津軽地域には鳥居に鬼が鎮座する神社もあり、鬼がいかに特別な存在かがわかる。また鬼沢地域では節分に豆まきはしないという。最近、幼稚園などで豆まきをする場合も〝福はうち、鬼もうち〟と言うそうだ。優しい鬼を敬う気持ちはこれからも引き継がれていく。

文=木村理恵子  写真=葛西亜理沙
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