雪が降り積もり、辺りが真っ白に染まった夜、青森県弘前市にある弘前公園の冬のさくらが満開を迎える。「冬のさくら」というと、冬に咲く桜を想起するが、これは雪をさくらに見立てた風景のこと。風の強い日には、雪が舞い「さくら吹雪」が、御濠が凍ると「雪の花筏」が見られることもあり、日によって全く違った表情が楽しめる。
春に咲くさくら 写真提供:弘前観光コンベンション協会
「日本三大夜桜」のひとつに数えられる弘前公園は、2,600本、52種類の桜が咲く日本屈指の桜の名所だ。江戸時代に持ち込まれたという桜は、日本最古級のソメイヨシノのほか、樹齢100年を超す木が300本以上もあり、毎年絶景をひと目見ようと多くの人が訪れる。これらの桜は、「桜守(さくらもり)」と呼ばれる樹木医たちが管理し、剪定にはリンゴの剪定技術を応用。そのため、手毬のような多くの花を咲かせるのが特徴となっている。
天候や積雪状況によって見え方が変化する 写真提供:冬に咲くさくらライトアップ実行委員会
「冬に咲くさくらライトアップ」は、弘前公園の桜を冬にも楽しんでもらいたいと始まった冬のイベントだ。きっかけとなったのは、2016年に当時弘前市相馬地区の地域おこし協力隊員であった米山竜一さんが撮影した1枚の写真だった。雪が降り積もった桜の並木が街灯に照らされてピンク色に染まっている―。その風景はまるで満開の桜。よく見ると雪だと気づく、驚きと感動の声が上がる絶景だった。
ライトの色によって美しく幻想的に輝くさくら 写真提供:冬に咲くさくらライトアップ実行委員会
2017年から始まった「冬に咲くさくらライトアップ」は年々規模が大きくなっていった。2019年にはピンクやブルーに色を切り替えるライトアップを行い、2020年以降は少しでも明るい話題をとコロナ禍でも開催された。5周年を迎える今年は、フルカラーLED投光器の設置を拡大し、弘前公園の追手門付近を弘前の四季をイメージした4色(春:ピンク、夏:緑、秋:オレンジ、冬:青および白)で交互に照らす。
現在は、冬に咲くさくらライトアップ実行委員会として活躍する米山さんは、「春のピンク色に加え、他の季節を思わせる色でライトアップを行うことで、地元の方には好きな季節を思い浮かべて冬を乗り切る楽しみに、また、旅行者の方には四季折々の弘前の情景の片鱗を感じていただき、ほかの季節にも訪れるきっかけになってほしいと思います」と語ってくれた。
公園全体を美しく照らすダイナミックなライトアップ 写真提供:冬に咲くさくらライトアップ実行委員会
今年は、12月1日~2023年2月28日の日没~22時に、弘前公園の追手門付近を中心とした、公園の外濠約600mでライトアップが行われる。冬のさくらの満開や見ごろ時期は、本物の桜のように一定期間あるわけではなく、必ずしも"満開"が見られるわけではないが、例年の傾向では12月下旬~1月上旬、2月上旬~中旬に見ごろになる日が多いという。
2023年2月9日~12日には「第47回弘前城雪燈籠まつり」も開催。弘前公園内に立つ約150基の雪燈籠や雪像に明かりが灯され、ライトアップされた弘前城、そして「冬に咲くさくらライトアップ」とともに夢のような世界を作り出す。
雪に包まれる冬の弘前。今年のさくらはどんな感動を与えてくれるのか。「冬に咲くさくらライトアップ」は今や弘前の冬の風物詩となっている。
好みのさくらを見つけるのも楽しみのひとつ 写真提供:冬に咲くさくらライトアップ実行委員会
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