宮崎県日南市の見どころと旅の拠点におすすめの宿を紹介したトラベル&ライフ2022年12-1月号の特別企画「南国・日南 よかとこ巡り」。ここでは、特集でふれた飫肥城下町で味わいたい名物について、もう少し詳しく取り上げたい。
長倉を利用した外観が目を引く
名物の「おび天」を味わおうと訪ねたのは、飫肥の大手門から歩いてすぐの「おび天 蔵」。風格ある建物は、その名の通り、店舗は江戸時代に長倉として建てられた建物を利用したもの。
木の葉型に形を整えて、菜種油で揚げる
店頭で実演販売をしている
「おび天」は、シイラやブリなどの白身魚のすり身に自家製豆腐を加えて捏ね、黒砂糖や味噌などで味付けをして、それを木の葉型に形を整えて菜種油で揚げる。150℃で5分ほど、さらに160℃で揚げている。この様子は店頭で実演販売をしているので、見ることができる。
おび天とゴボウ入りおび揚げが味わえるおび天盛り合わせが人気
店内にはおみやげ用のほか、イートインスペースがある。揚げたての「おび天」はふわふわの食感で、少し甘みがあり、優しい味わい。プレーンのほか、ゴボウ入りや紅ショウガ入り、青じその実入りなどバリエーションも豊富だ。
厚焼卵の抹茶セット
もうひとつの名物が「厚焼卵」。昔ながらの味を守る専門店「おびの茶屋」を訪ねた。 さっそく「抹茶セット」を注文する。運ばれてきた厚焼卵は、キレイな濃い黄色。一口味わってみると、滑らかな口当たりと濃厚な卵の風味が広がる。ほどよい甘さがあり、まるでプリンのようで、一般的な卵焼きとは全く別物だった。
手作りで作り続ける久島佳朗さん
「厚焼卵は、飫肥の郷土料理です。和風プリンとも言われていて、皆さん食べると想像していたのとは違うと驚かれます」と話すのは、代表の久島佳朗さん。
滑らかな口当たりの鍵を握るのは、焼き方だ。縦18cm、横18cm、深さ6㎝の銅鍋に卵液を一気に流し込んで炭火で焼く。卵は20個分で、そこに砂糖と塩、みりんを加え、よくかき混ぜて、丁寧に裏ごしをして一晩寝かせている。
蓋をしてその上に炭を置き、上下から火を入れる
「蓋の上にも炭火を置いて、上下から火を入れてゆっくり焼き上げます。弱火で約1時間。焦げたり、すが入ったりしないように様子を見ながら焼くので、1時間つきっきりです。手作りなので、大量生産はできないんです」。
微妙な火加減の調整は、長年の経験によって培われている。熟練の技できれいな焼き色と滑らかな口当たりは生まれている。