「高千穂の夜神楽」
「高千穂の夜神楽」

神話と伝説の町 高千穂の神楽

にほん再発見の旅
2022年11月15日
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国内旅行
旅行記

天の岩戸開きや天孫降臨などの神話と伝説の町として知られる宮崎県高千穂町で、今年も「高千穂の夜神楽」が奉納される。「神楽」とは、神様に奉納するための歌や舞のこと。「高千穂の夜神楽」の発祥は諸説あるが、平安末期から鎌倉時代にかけて成立したなどともいわれ、国内に数ある神楽の中でも、昭和53年(1978年)に国の重要無形民俗文化財に指定された貴重なものだ。

毎年11月中旬から翌年の2月上旬まで、町内にある20の集落ごとに氏神(うじがみ)様を神楽宿と呼ばれる民家や公民館に招き、「天照大神の岩戸隠れ」を題材とした三十三番の神楽を夜通し奉納する。神話や伝説の中に登場する神々が総出演し、厳かな雰囲気の中「ほしゃ殿(どん)」と呼ばれる舞人が、勇壮に、優美に舞う様子は圧巻だ。また、集落によって例祭日だけでなく、題目や舞の順番が異なるのも特徴だ。どこで見ても新たな感動に出会えるおもしろさがある。

※「高千穂の夜神楽」は一般の観光客にも公開されていたが、今年はほとんどの地区で地元の人たちのみでの開催となり、日程表も例年と異なり非公表となった。

高千穂神社で開催される「高千穂神楽」 高千穂神社で開催される「高千穂神楽」

期間限定の「高千穂の夜神楽」に対し、毎日20時から行われるのが「高千穂神楽」だ。「高千穂神楽」は「高千穂の夜神楽」の見どころを1時間ほどにまとめたダイジェスト版。観光用に行われているもので、高千穂神社境内の神楽殿(畳の広間)で開催され、三十三番の神楽の中から代表的な「手力雄(たぢからお)の舞」「鈿女(うずめ)の舞」「戸取(ととり)の舞」「御神体の舞」を公開している。各集落の神楽の舞手が交代で奉納するため、手軽に本格的な舞が体感できるのが魅力。かがり火が灯る高千穂神社裏参道を歩くのも楽しみの一つとなっている。

※11月22日・23日は、「神話の高千穂夜神楽まつり」のため「高千穂神楽」は開催しないが、祭りの神楽が楽しめる

「手力雄の舞」
「手力雄の舞」

「鈿女の舞」
「鈿女の舞」

「戸取の舞」
「戸取の舞」

「御神体の舞」
「御神体の舞」

「高千穂の夜神楽」で奉納される三十三番は、一番から七番までを「よど七番(よどななばん)」と呼び、普通はこの七番で願成就となる。また、三番の「神降(かみおろし)」・四番の「鎮守(ちんじゅ)」・五番の「杉登(すぎのぼり)」は最も重要とされ、これらは「式三番」と呼ばれ、どの集落でも必ず奉納されている。

「高千穂神楽」で行われるのは、天照大神が隠れている天岩戸を探しあてる二十四番「手力雄の舞」、天岩戸から天照大神を誘い出す二十五番「鈿女の舞」、天岩戸を開き、天照大神が出てきて世の中が明るくなる二十六番「戸取の舞」。これら「天照大神の岩戸隠れ」を題材とした神楽のほか、クライマックスには伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と伊邪那美命(いざなみのみこと)が新穀で酒を造り、仲良く酒を飲んで抱擁し合う二十番「御神体の舞」を奉納する。夫婦円満、子孫繁栄、五穀豊穣を願う舞はリズミカルで、会場は最高潮を迎える。

高千穂神社 高千穂神社

800年の歴史を経て、一年に一度厳かに行われる「高千穂の夜神楽」と、毎日旅人たちに高千穂の伝統芸能を伝える「高千穂神楽」。高千穂の人々の信仰心によって育まれてきた神楽は、今もなお大切に受け継がれ、見るものを神話の世界へと導いてくれる。

「高千穂の夜神楽」:通常は一般に公開されているが、今年は新型コロナウイルス拡大防止のため非公開
「高千穂神楽」:毎日20時より開催、観覧可能

協力=高千穂町観光協会 写真=宮崎県観光協会 文=磯崎比呂美
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