MRT善導駅と忠孝新生駅のちょうど真ん中あたり、齊東街にひっそり佇む「台湾文学基地」は、1920~1940年代にかけて建設された、7棟の日本家屋が集まるスポット。
ここは当時、日本人職員向けの宿舎として使用されていた建物でしたが、終戦を迎え日本が台湾から立ち去った後は、政府職員の寮として利用されるようになり、一部は台湾銀行行員の宿舎としても使われるようになりました。
時が流れ、台北市内の都市開発が進み、2000年代に入ってからは、取り壊しの危機にも直面したこれらの建物。しかし地域住民による懸命の努力のお陰で、一部を修復し保存されることが決まったのです。
最も早く修復が完了した1棟が「齊東詩舎」として2014年にオープン。その後6棟の修復も進められ、2020年に展示スペースやイベントスペース、カフェなどが併設された、市民の憩いのスポットへと変貌を遂げたのです。
見どころがたっぷり詰まった「齊東舎」は入口左手の建物。日本統治時代に「台北の城東(旧台北城から見て東側)」と呼ばれていた地域の資料や、この建物が修復される前の姿を写真で見る事ができます。インフォメーションに置かれている日本語パンフレットを読みながら、それらの展示品を見れば、当時の歴史やこの街の時の流れを知る事ができるでしょう。
どの建物もどこか懐かしく、昭和生まれの方であれば、祖父母の家にタイムスリップしたような気分を味わえます。細くて長い廊下、可愛らしい型板ガラスやタイル、美しい欄間を見れば、ここが台北だという事を忘れてしまいそうに。
今、台湾の若者たちの間で、ブライダルフォト撮影スポットとして、じわじわ人気上昇中のこの場所。長い時を経て穏やかに表情を変えた「台北に残る日本の街角」を、ゆっくり散策してみてください。
臺灣文學基地(タイワンウェンシュェジーディ)
所在地:台北市中正區濟南路二段27號
交通:MRT忠孝新生駅5番出口から徒歩10分
営業時間:10:00~18:00
休館日:月曜
入館料:無料
「台湾文学基地」の裏側にある「台北琴道館」は、楽器好きな方に立ち寄っていただきたいギャラリー。小さな展示スペースでは、哀愁漂うオリエンタルな音楽が流れていて、それを聞きながら3000年以上の歴史を持つ古琴の説明や、構造、パーツなどを見学することができます。
何より嬉しいのは居心地の良さ。モダンでしっとりした空間は、和と中華が融合した佇まいとなっていて、丸窓や縁側に入り込む光を眺めながら、非日常的な時間を過ごせます。情緒溢れる建物をじっくり見つめるのも、このギャラリーの楽しみ方かもしれませんね。
なお、館内見学の際に靴下を履いていない場合は、入口で購入しなければならないため、サンダルで出かける時は、靴下をご持参ください。
臺北琴道舘(タイベイチンダオグァン)
所在地:台北市中正區濟東街53巷11號
交通:MRT忠孝新生駅5番出口から徒歩10分
営業時間:10:00~17:00
休館日:月曜、火曜
入館料:無料
※掲載の情報は、変更となる場合があります。(2022年6月取材)