トラベル&ライフ2022年8-9月号の特集「飛鳥Ⅱで楽しむ極上クルーズ」では、飛鳥Ⅱの魅力を客室や付帯施設、料理、エンタテインメントにスポットを当てて紹介した。ここでは、本誌では掲載しきれなかった見どころを取り上げたい。
まずは、全国各地の伝統工芸作品の展示。日本の伝統工芸における重要無形文化財保持者(人間国宝)を中心に伝統工芸作家や技術者などで組織された「公益社団法人 日本工芸会」と飛鳥クルーズとのコラボレーションで実現した企画で、ブックラウンジ「イー・スクエア」や「アスカプラザ」など、船内の随所に彼らの作品を展示している。作品は陶芸や染織、漆芸、金工など多岐にわたり、まるで美術館のよう。乗船中は好きな時に、好きなだけ鑑賞できる。
もうひとつは、飛鳥Ⅱが初寄港した際に、港がある市町村から贈られた記念の楯。「グランドスパ」がある最上階の一角の壁に記念の楯が飾られている。楯は意匠もモチーフも個性豊かなので、見ているだけでも楽しい。
日本屈指の豪華客船として知られる飛鳥Ⅱは、ホスピタリティーに定評がある。実際、乗客から「飛鳥Ⅱが運航再開したのでずっと乗りたかった。今回、やっと乗船できてうれしい」という声も聞き、さらに乗客がスタッフと和気あいあいと話している様子もあちこちで目にした。スタッフがフレンドリーなだけではなく、細やかな心配りが行き届いている。例えば、客室には船内の各所で手指の消毒を行うので手荒れ予防にロクシタンのハンドクリームが置かれ、さらに飛鳥Ⅱの船体をあしらったマスクケースも用意されている。
"楽しんでほしい"というおもてなしの心も随所に感じられる。料理もそのひとつ。メインダイニング「フォーシーズン・ダイニングルーム」でいただく夕食の和食は、器にもこだわり、季節感や寄港地の名物を取り入れた料理が並ぶ。その中でひときわ目を引いたのが、「スズキの酒盗焼」の盛り付けに使われていた笹。飛鳥Ⅱの船体が細工され、その見事さに感嘆するのはもちろん、テーブルを共にした人との会話のきっかけになる。
ビュッフェスタイルのレストラン「リドガーデン」も見逃せない。朝食でオムレツをオーダーした際、なんとケチャップでイルカをあしらってくれた。こうした遊び心の積み重ねで、クルーズの時間が心温まるものになっていく。
今回のクルーズでは予想外の"ご褒美"もあった。クルーズ乗船3日目、豊後水道付近を走行していた朝9時頃のこと。イルカが船のすぐ近くを泳いでいるという船内放送が流れた。急いでデッキに出て姿を探したが、なかなか見つけることができない。諦めかけた時に、遠くにイルカを発見! 思わず"いた!"と声をあげるほど、大興奮。思いがけないイルカウォッチングは良い乗船記念になった。