今年は早くから各地で梅雨が明け、猛暑が続く日本列島。土用の丑の日にはうなぎを食べて、この暑さを乗り切りたいという人も多いのではないだろうか。今年の土用の丑の日は7月23日と8月4日。この日ばかりは奮発して、間違いなくおいしいうなぎを食べたいものだ。今回は、全国生産量約20%を誇る愛知県西尾市一色産のうなぎを紹介しよう。
身が締まり脂ののったうなぎ
三河湾に面し、矢作川の清流と温暖な気候に恵まれた愛知県西尾市一色町。この地でうなぎの養殖が行われるようになったのは、明治27年(1894年)のことだが、養殖が急速に発展したのは、昭和34年(1959年)の伊勢湾台風がきっかけだった。被害に遭い水に浸かった田畑をうなぎの養殖池に転用したことで生産量が飛躍的に上がり、さらに養鰻専用水道の敷設、配合飼料の開発などを行ない、昭和40年代からは水温を28度ほどに保つことで、病気の発生を抑え、大量のうなぎを育てることができる加温式温水養殖(ハウス養殖)を導入したことによって、おいしいうなぎの名産地としてその名を知られるようになった。
加温式温水養殖(ハウス養殖)
シラスウナギ
一色産のうなぎの特徴は、皮が柔らかく、身もしっかりと脂がのっていること。そして大きさも大きすぎず、小さすぎもしないという点だ。このようなうなぎを育てるために、一色町では、河川水を使用した養殖を行っている。養殖は井戸水を使った養殖が一般的だが、愛知県を流れる一級河川、矢作川の表層水を取水し養殖に使用。より天然に近い環境を整えることでうなぎがストレスなく育つというのだ。また、シラスと呼ばれる稚魚のうちから毎日エサをやり、病気になれば世話をして、成長の段階に応じて選別を行うなど、多くの手間をかけて育てられる。
うなぎの出荷作業「掬い(すくい)」
200gから300gほどの成魚まで育つと、「掬い(すくい)」が始まる。これは、活きたうなぎをドウマンと呼ばれる魚篭に詰めて出荷する作業のこと。その後、魚肉を締めたり、泥を吐かせるために数日間地下水の中で保管し、全国に配送されるという。出荷の最盛期はやはり夏。土用の丑の日の1か月ほど前から、養殖池の中では慌ただしく出荷作業に追われるという。
ひつまぶし
うなぎ料理で最も一般的なのはかば焼きだが、白焼きやうまき、肝吸いなどさまざまな料理でうなぎを味わうことができる。特に一色町のある愛知県ならではのうなぎ料理といえば「ひつまぶし」ではないだろうか。「ひつまぶし」とは、うなぎのかば焼きを細かく刻んでご飯に乗せた料理だ。かば焼きをご飯に混ぜて一杯目は茶碗によそってそのまま、二杯目はネギやわさび、ノリとともに、三杯目はお茶漬けにして......と、1つの料理で3つの味わいが楽しめると人気だ。一色町には、養殖場が経営する店やうなぎ問屋の店のほか、100年以上の歴史ある名店などが点在しているので、ぜひ訪れて地元ならではの味わいを楽しんでみるといいだろう。
良質なたんぱく質、カルシウムはもちろんのこと、ビタミンAやビタミンEといったビタミン類など、栄養素が豊富に含まれているうなぎ。今年はぜひ土用の丑の日には上質でおいしい一色のうなぎを食べて、この暑い夏を乗り切りたい。