上質な温泉が勢いよく流れ落ちる。絶えることなく湧き出る温泉は止まることはなく、湯滝の周りは常に湯気が立ち上り、熱気に包まれている。草津温泉は自然湧出量が日本一、毎分約32,300ℓ以上の温泉が溢れて出ている天下の名湯だ。泉質も強い酸性(pH1.5~2.1)で5寸釘をつけておくと、10日ほどで溶けてしまうほどで、さまざまな病に効果を表し「恋の病以外は効かぬ病はない」と言われてきた。
草津温泉のシンボル 湯畑
草津温泉にはかつて100以上もの源泉があると言われていたが、現在は万代鉱・湯畑・白旗・西の河原・煮川・地蔵源泉という大きな6つの源泉が主に使用されている。中でも湯畑は温泉街の中心にある観光スポット。源泉が湧き出るのは、熱湯の池の中にある「お汲上げの湯枠」で、そこから50~90℃という高温の源泉が7本の湯樋に通り、湯滝を通って入浴浴場や宿に運ばれる。外気に触れることで温度を下げるため、加水や水増しがされることはなく、さらに浴槽でも沸かし直しや湯の循環をしないため、源泉そのものを楽しむことができるのだ。それぞれの源泉により、泉質の異なる湯が楽しめる草津温泉。日帰り入浴施設や共同浴場などをめぐり、湯の違いを楽しむのもおすすめだ。
※令和4年4月現在、一般開放されている共同浴場は「白旗の湯」「千代の湯」「地蔵の湯」のみ
西の河原露天風呂
御座之湯
大滝乃湯
草津温泉には、日本有数の広さを誇る露天風呂「西の河原露天風呂」、冬住みをしていた江戸~明治時代の建物を再現した「御座之湯」、大浴場、露天風呂、湯温の異なる浴槽を低温から高温に順に入る合わせ湯が楽しめる「大滝乃湯」という日帰り入浴施設がある。また、地元の人のために作られた無料の共同浴場も点在。「白旗の湯」、「千代の湯」、「地蔵の湯」は観光客も使用することができるので、利用してみるのもいいだろう。ただし、利用は地元の人たちのマナーに従って。そうすることで、地元の人たちがいかに温泉に親しみ、温泉を大切に守ってきたかを知ることができるだろう。
豊かな自然に囲まれた草津
天下の名湯として知られてきた草津温泉だが、早くから環境のことを考え、温泉を利用したサステナブルな取り組みがされていることはあまり知られていない。昭和51年(1976年)から、温泉を運ぶ管と水道管とで熱交換を行い、温泉は入浴に適した温度になって各温泉施設に、水道水は温かい水となって各家庭に運ばれ、ボイラーの使用を削減。また、温かくなった水道水や温泉の排湯を道路下のパイプに通すことで、冬季の路面凍結を防いでいる。さらに、各地で利用された温泉が放流される湯川にはかつて生物が棲むことができなかったが、石灰を入れて中和させ、川は魚が住める環境に戻す取り組みも行われている。
温泉という自然の恵みによってその名を知られ、栄えてきた草津温泉。この素晴らしい財産を残すために、早くから町の人たちが知恵を出し合い取り組んできた活動は、今話題となっているサステナブルの先駆けとなっている。