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野沢菜発祥の地、健命寺
野沢菜発祥の地、健命寺

野沢温泉、菜の花が咲く村へ

にほんグルメ探訪
2022年04月15日
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国内旅行
旅行記

5月、長野県の野沢温泉村では、いたるところでレモンイエローに染まる花畑に出会います。これは春によく見られる菜の花畑ですが、菜種油の原料となるアブラ菜ではなく、野沢菜の花だということをご存知でしょうか。

1mほどの長さまで育つ野沢菜 1mほどの長さまで育つ野沢菜

長野県の郷土食として挙げられるもののひとつが「野沢菜漬け」でしょう。そしてその原料となる野沢菜発祥の地は野沢温泉だと伝えられています。今から遡ること約250年、江戸時代中期の宝暦年間(1751年~1763年)に健命寺の住職が京都から天王寺蕪を持ち帰りました。住職が天王寺蕪を植えると、葉が大きく蕪が小さくなってしまいましたが、地元の人たちはこれを冬の保存食として漬物にして「野沢菜漬け」が誕生しました。

もともと「蕪菜」、地元の人たちは「お菜」「お葉漬け」と呼んでいますが、大正時代になるとスキー客や湯治客が多く訪れ、地名から「野沢菜」と呼ばれるようになったといわれています。

お菜洗い お菜洗い

野沢温泉では漬物用の種まきが行われるのは「七夜盆」の8月27日・28日ごろ、収穫は11月初めから半ばにかけてです。収穫が終わると、外湯に地元の人たちが集まり、世間話をしながら野沢菜を洗う「お菜洗い」が行われます。

野沢菜を漬ける一石桶 野沢菜を漬ける一石桶

綺麗に洗われ、温かい温泉でやわらかくなった野沢菜は、各家庭で大きな一石桶で漬けられます。野沢菜の漬け方の基本はほとんど同じですが、塩にこだわったり、自分で作った唐辛子を入れたり、調味料も各家庭に伝わる種類や分量で漬けられるため、その味わいもさまざまです。

浅漬けと本漬け代替文
浅漬けと本漬け

時漬け
時漬け

11月初旬の収穫最盛期には、切った野沢菜を使って手軽に少量ずつ作る「時漬け」が食卓に並び、11月下旬から12月初旬にかけては漬け込んだばかりの緑色のしゃきしゃきした「浅漬け」、12月下旬まで漬けて、べっ甲色のやわらかく深い味わいの「本漬け」と変わっていきます。

芽が出て最初に間引きをした「一番間引き」は、茹でて食べると「鯛の刺身よりもうまい」といわれ、地元では珍重されています。

地元の人にとって「野沢菜漬け」はなくてはならないものなのだとか。お茶請けやおつまみにもなり、朝食では納豆に混ぜて食べるなど、毎日食卓にのぼっているのだといいます。

野沢温泉のざわな蕪四季會社の活動 野沢温泉のざわな蕪四季會社の活動

平成2年(1990年)には、野沢温泉観光協会が主催して「野沢温泉のざわな蕪四季會社」を設立。「蕪主」になれば「野沢菜漬け」「野沢菜の一番間引き」などを宅配してくれます。他にも地元の人たちと交流できる「蕪主総会」も開催され、野沢菜漬けファンにはたまらない内容で、「蕪主」も年々増えています。

これからの季節、黄色い美しい菜の花畑に出会える野沢温泉。5月14日(土)~15日(日)には、野沢温泉村一円で「野沢温泉菜の花パノラママーチ」を開催。野沢温泉の文化と歴史そして、自然の風景を楽しみに、全国各地から多くの人が訪れます。

協力・写真=野沢温泉観光協会 文=磯崎比呂美
※掲載の開催情報は変更となる場合があります。
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