「日本で最も美しい村」中川村の美しい棚田
中央アルプスと南アルプスに囲まれ、のどかな田園風景が広がる長野県中川村。「日本で最も美しい村」の一つとして知られるこの村(※)には、100年以上にもわたって地酒を作り続ける酒蔵「米澤酒造」があります。
※NPO法人「日本で最も美しい村」連合に加盟
中川村の人たちに愛され続ける地酒「今錦」
米澤酒造の創業は、明治40年(1907年)に遡ります。以来、南アルプスの伏流水と地元の酒米を中心に使用した「今錦」のほか、中川村の飯沼地区にある美しい棚田で作った酒米で仕込んだ「飯沼棚田米 おたまじゃくし」などを造り、地域との強い結びつきの中で、中川村の景観や文化を育んできました。
酒槽搾り
米澤酒造の歴史を刻む木製の酒槽
平成26年(2014年)には、伊那食品工業のグループ会社となり、蔵や設備を一新。杜氏や蔵人の技術だけでなく、データに基づいた新しい日本酒造りが開始されました。また、このとき、従来から行っていた酒槽搾りを継承し、純米大吟醸から普通酒まですべてのお酒に採用しました。酒槽搾りとは、酒槽に醪(もろみ)を入れた酒袋を積み重ね、上から圧力をかけて搾る方法のこと。手間も時間もかかりますが、やわらかく雑味のない日本酒に仕上げるためには欠かせなかったといいます。
一方原料となる水や酒米は従来のままに、伊那食品工業のノウハウを取り入れ製造過程のクオリティを上げることによって、おいしさと旨味があり、酸と甘みのバランスがとれていて後味がすっきりと切れる、特に地元の食材と相性のいい日本酒が完成しました。
IWCで2年連続金賞を受賞した「純米大吟醸 年輪」「今錦 純米大吟醸」
令和3年には、ロンドンで開催される世界最大規模のワイン品評会「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)」において、純米大吟醸の部で「純米大吟醸 年輪」と「今錦 純米大吟醸」、「NENRIN S 純米大吟醸」の3品が金賞を受賞しました。3品が同時に金賞を受賞するのは史上初の快挙です。「純米大吟醸 年輪」「今錦 純米大吟醸」については昨年に続いて2年連続の受賞。さらに4つのお酒が賞を受賞し、米澤酒造の日本酒の美味しさは世界中に知られることになりました。
「コンテストで賞をいただくこと。私たちにとってそれは目的ではなく手段です。私たちは毎年最高に美味しい日本酒を造りたい、造っていると思っていますが、実際にそれが美味しいのか、市場が受け入れてくれるかは分かりません。杜氏や蔵人たちが毎年試行錯誤を繰り返しながら造る日本酒が、日本でそして世界でどのように評価されるのか、私たちが目指している美味しさは間違っていないのかを確認するために、毎年コンテストに出品しているのです。」と語るのは、新体制になってから杜氏や蔵人とともに米澤酒造を支えてきた松下一成専務取締役です。
そのためあえて評価が厳しく、なかなか賞のとることのできないコンテストに出品しているといいます。IWCもその一つで、一昨年に続く昨年の快挙はとても喜ばしく、大きな自信とこれからの励みになると語ってくれました。
毎年、再現性(同質のものを造る)を求めるだけでなく、さらなる高みを目指して最高の酒造りを行う米澤酒造。今年はどんな味わいが楽しめるのでしょうか。そして来年は、その次は......。世界が認める銘酒はこれまでもこれからも進化し続けます。