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冬に旬を迎える野菜と共にいただくふぐちり
冬に旬を迎える野菜と共にいただくふぐちり

"幸福を招く魚" 下関のふぐ

にほんグルメ探訪
2022年02月15日
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国内旅行
旅行記

古くから豊かな漁場に恵まれ、ふぐ取扱量日本一として知られる下関。市内には極上のふぐ料理の名店から気軽に立ち寄れる居酒屋まで多彩な店が点在し、ふぐちりやふぐ刺し、ふぐ丼、唐揚げ、ひれ酒など、さまざまな味わいが楽しめます。
ちなみに、下関における「ふぐ」の呼び方は「ふく」。「ふぐ」=不遇ではなく「ふく」=福を招くという思いが込められています。

猛毒があるが、他にはない美味しさで人々を魅了するふぐ 猛毒があるが、他にはない美味しさで人々を魅了するふぐ

日本においてふぐの歴史は古く縄文時代にはすでに食べられていたといわれます。けれどもふぐの毒による中毒死が増えたたため、豊臣秀吉が「河豚食禁止令」を出し、以後江戸時代、明治時代に至るまでふぐ食は禁止されていました。

ふぐ食が解禁されたのは、明治21年(1888年)のこと。初代内閣総理大臣の伊藤博文が下関を訪問した際、その日は時化のために魚が獲れず、女将がふぐを出したところ大変喜ばれ、その後伊藤博文公は当時の山口県知事にふぐ食解禁を働きかけました。解禁後は、全国にふぐのおいしさが浸透し、また「ふぐは下関」と知られるようになりました。

天然トラフグの取扱量日本一を誇る南風泊市場
天然トラフグの取扱量日本一を誇る南風泊市場

天然トラフグの取扱量日本一を誇る南風泊市場

現在、ふぐは全国から下関に集められています。市内の彦島にある南風泊(はえどまり)市場は、全国で唯一ふぐを専門に取り扱う卸売市場です。セリが始まるのは午前3時ごろから。ここでのセリは「袋セリ」と呼ばれ、黒い筒状の袋で仲買人がセリ人の指を握って値段を決めます。「袋セリ」が行われているのは、全国でも南風泊市場だけ。売り手と買い手が一対一となって行う「袋セリ」は、一人の売り手に対して大勢の買い手が行うセリよりも効率はよくありませんが、代替えの効かない高級魚であるふぐの場合は、時化の時など水揚げ量が少なかったときに、セリ場が荒れてしまうことを防ぐためだったといわれています。

また、ふぐの毒や食べられない部分を取り除く下処理「身欠き(みがき)」という高度な技術をもつ加工場が下関付近に集まっています。ふぐは全国から集められ、「みがきふぐ」となって、全国に出荷されます。

ふぐ刺しは、牡丹盛りや菊盛りなど盛り付け方にも種類がある ふぐ刺しは、牡丹盛りや菊盛りなど盛り付け方にも種類がある

天然ふぐの旬は、一般的に「秋の彼岸から春の彼岸まで」といわれ、11月下旬から3月下旬とされています。ぷりぷりと身の引き締まったふぐの味は絶品です。1月から3月には白子も大きく育ち、ふぐを存分に楽しむことができるでしょう。
現在は養殖ものもあり、一年中そのおいしさを楽しむことができますが、ふぐちりやひれ酒など体がぽかぽか温まる料理は冬ならではです。合わせていただく旬のネギやかんきつ類もふぐのおいしさを引き立て、心も体もじんわりと温めてくれます。

協力・写真提供=下関観光コンベンション協会 文=磯崎比呂美
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