トラベル&ライフ2022年2-3月号の特集は「茨城のアンコウ、和歌山のクエ」。和歌山ではクエ鍋をはじめ、那智の滝、和歌山市内の街歩き、そして特産品の南高梅と南高梅を使った料理を楽しめるお店を紹介した。ここでは、その特集では掲載できなかった和歌山の絶景スポットを取り上げたい。
最初に訪ねたのは、田辺市の市街地から車で10分ほどの天神崎。"和歌山のウユニ塩湖"といわれ、数年前にSNSに投稿されたのがきっかけで注目を集める"映えスポット"だ。ちなみにウユニ塩湖は南米のボリビアにある湖で、湖に空の風景をまるで鏡のように映し出し、その風景は世界屈指の絶景と称されている。
天神崎は田辺湾の北側に突き出た岬で、日和山を中心とする緑豊かな丘陵部と干潮時に姿を現す平らな岩礁で形成されている。この岩礁を挟んで、陸と海の動植物が同居して森と磯と海が一体となり一つの生態系を作る貴重な場所でもある。
この天神崎の豊かな自然は、かつて失われる危機があった。1974年に天神崎に別荘地開発計画が持ちあがったのだ。これを機に、「天神崎の自然を大切にする会」が発足。自然を守るために募金による天神崎買取運動が起こり、この運動は日本のナショナル・トラスト運動の先駆けとして知られている。
その天神崎に行くと、すでに家族連れや若者たちのグループなどで賑わっていた。潮だまりが続き、水面は鏡のように青い空と白い雲を見事に映している。こうした光景を楽しめるのには、いくつかの条件がある。まずは、引き潮で潮位が150~140cm程度になる時。さらに水面が波打ってしまうので、雨天や風が強い日も見ることはできない。
真っ青な空を映す昼間もいいが、空が茜色に染まる夕暮れはどこか幻想的。雲のあるなしでも写真の表情が変わるので、渾身の一枚を収めようとすると、時間が経つのを忘れてしまう。
白浜町のシンボル・円月島
円月島も絶景スポットのひとつ。白浜町に面する臨海浦の南海上に浮かぶ南北130m、東西35m、高さ25mの小島だ。正式には「高嶋」というが、島の中央に円月形の海蝕洞が開いていることから「円月島」と呼ばれている。
のどかな雰囲気が漂う昼間の風景もいいが、オレンジ色の空をバックに島のシルエットが浮かび上がる夕暮れ時は格別。特に、春分の日や秋分の日前後の数日がおすすめ。海に沈みかけた太陽が海蝕洞にすっぽり入り、他にはない幻想的な風景を見ることができる。
真っ白な砂浜が続く白良浜
最後に紹介するのは、同じく白浜町にある白良浜。本誌で紹介した天然クエ専門店「風車」から車で約5分。弓なりに640mにわたって真っ白な砂浜が続く海岸には、エメラルドグリーンの海と白浜沿いにホテルが立ち、姉妹浜のワイキキビーチを彷彿とさせ、リゾート気分を満喫できる。本誌で紹介した通り、クエは冬に旬を迎えるが、産卵前に脂がのった夏もまだ食べ頃という。リゾート気分を満喫し、クエを味わうのも白浜町の夏の楽しみだ。