太陽の光を浴びて水面がきらきらと輝く諏訪湖。寒さの厳しい冬には湖面が凍り、様々な氷の造形美が楽しめる。長野県の中央部に位置し、四方を山に囲まれた諏訪盆地に広がる諏訪湖は、周辺に諏訪大社二社四宮が点在する神秘の湖だ。
諏訪湖特有の現象「御神渡り」
諏訪湖の面積は約12.81km²で、外周は約16km。長野では最も大きな湖だが、冬場は湖面が全面氷結し、氷の道「御神渡り(おみわたり)」が発生することがある。これは氷の厚さが10cm以上になり、-10度以上の冷え込みが続くと、氷が裂けて大音響とともに山脈のように盛り上がる現象で、昼夜の温度差で氷が収縮・膨張を繰り返し発生するという。
南の岸から北の岸へかけて、高さ30cmから1mほどの氷の山脈が続く様子は圧巻だ。また、これは、諏訪大社上社の建御名方神(たけみなかたのかみ)が下社の八坂刀売神(やさかとめのかみ)のもとへ訪れた跡だという伝説も残っている。
「御神渡り拝観神事」
「御神渡り」が現れると、八劔(やつるぎ)神社の宮司によって「御神渡り拝観神事」が行われる。宮司が「御神渡り」のできた筋や方向を確認する神事「御渡拝観式」を行ない、さらにその年の気候、農作物のでき具合、社会情勢の吉凶等を占い、結果を公表するのだ。そして室町時代から行われているこれらの記録は八劔神社に保管されているという。
近年は温暖化のため冬でも全面氷結することが減り「御神渡り」が見られる年も少なくなってきている。最近出現したのは2018年で、2月1日に現れ、2月27日にほぼなくなった。1月から2月にかけて、数日から数週間見ることができる「御神渡り」。その幻想的な風景をひと目見ようと、多くの人が湖畔に集まる。
ワカサギとドーム型釣り船
諏訪湖のもう一つの冬の風物詩といえば、ワカサギ釣りだ。かつて諏訪湖では凍結した水面に穴を開けてワカサギを釣る「穴釣り」が行われていたが、近年の暖冬により氷が厚く張らなくなり、氷の上に乗ることは禁止されている。現在「穴釣り」を楽しむことはできなくなったが、その代わりに登場したのが暖かいドーム型の船内で楽しめるワカサギ釣りだ。船の中は底に穴があいており、その穴から釣り糸を垂らして楽しむワカサギ釣りは、手軽にできるため子どもや女性にも人気を集めている。また、氷が張る時期にしかできない「穴釣り」と異なり、10月~3月頃まで楽しめるのも魅力だ。
日の出に全面結氷の湖面が輝く
諏訪大社の四社巡りや温泉など、さまざまな楽しみ方がある諏訪湖。厳しい寒さから生まれる風景「御神渡り」やレジャー「ワカサギ釣り」など、魅力あふれる冬の時季もぜひ訪れてみたい。