静岡県の最東部に位置し、日本屈指の温泉観光地として知られる熱海。温暖な気候と、豊かな自然、夏には海水浴でにぎわう美しいビーチ、温泉など、たくさんの魅力に満ちた熱海は古くから多くの人たちの憧れの地であった。
この地に「熱海」という名がつけられたのは、天平勝宝元年(749年)のことだ。海中から温泉が湧き出して海水温度が上がったため、その周辺は「あつうみが崎」と呼ばれ、それが転じて「あたみ」と呼ばれるようになったといわれる。
熱海温泉の中心的な源泉だった「大湯間歇泉の地」
また、由来記には、熱湯によって多くの魚介類が死に、甚大な被害を受けた漁民たちのために、箱根権現の万巻上人が源泉を現在ある「大湯間歇泉の地」に移し、守護神として湯前神社を作ったのが熱海温泉の起源だと記されている。
現在、熱海温泉の源泉総数は500以上あり、総湧出量は毎分約16,600ℓ、平均温度は約63度と、良質の温泉が湧き出している。
熱海の名前が人々に知られるようになったのは江戸時代になってからだ。徳川家康が湯治に訪れ、熱海温泉の湯を気に入り、江戸城に運ばせたことに由来する。以来、参勤交代の折などに多くの大名が熱海を訪れ、その名が全国的に広まっていった。また、この時期多くの文化人も熱海を訪れ、たくさんの紀行文が書かれたことも一因になっていたと考えられる。
独特の雰囲気を持つ洋館「起雲閣」
明治・大正期には、皇族や政府の要人、著名な文人墨客たちが別荘を建て、熱海はさらなる賑わいを見せる。現在も残る起雲閣は、大正8年(1919年)に築かれた「熱海の三大別荘」の一つ。昭和22年(1947年)には旅館として生まれ変わり、山本有三、志賀直哉、谷崎潤一郎、太宰治、舟橋聖一、武田泰淳など、日本を代表する文豪たちが宿泊し、名作を生み出した。昭和に入ると、戦前から戦後にかけて新婚旅行ブームが起こり、また、社員旅行の人気の地として熱海に多くの人が訪れるようになった。
年間を通じて行われる「熱海海上花火大会」
幻想的な「サンビーチライトアップ」
昭和27年(1952年)からは、熱海海上花火大会を開催。夏だけでなく1年を通じて何度も行われる花火大会は熱海の名物イベントとなっている。また、日本で初めてビーチライトアップを行うなど、温泉リゾートのさきがけとして、さまざまなイベントの取り組みを行っている。
10月1日からは「熱海芸術祭」を開催中。「ATAMI ART EXPO 2021」「第4回 熱海怪獣映画祭」をはじめ、「熱海海上花火大会」や「第35回 熱海梅園もみじまつり」を行い、文化の街・熱海をステージに、新しい芸術の息吹を感じるイベントが開催される。
芸術、味覚、温泉、歴史、さまざまな魅力溢れる熱海。これからどのように進化していくか楽しみな街である。