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高野山真言宗 別格本山 おふさ観音の本堂と風鈴
高野山真言宗 別格本山 おふさ観音の本堂と風鈴

おふさ観音「風鈴まつり」と「奈良風鈴」

季節を感じる日本の旅
2021年07月15日
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国内旅行
旅行記

風に揺られる度に、ちりんと上品な音色を奏でる風鈴。年々暑くなる夏だが、この音色を聞くとなぜか涼しさを感じ、癒される。今回は風鈴の不思議な魅力とともに、奈良県橿原市にある高野山真言宗 別格本山 おふさ観音で開催される「風鈴まつり」と「奈良風鈴」を紹介しよう。

風鈴は、短冊が風を受けて、舌が揺れ、鐘に当たって音が出る 風鈴は、短冊が風を受けて、舌(ぜつ)が揺れ、鐘に当たって音が出る

風鈴の起源は、中国という説があり(インドという説もある)、もとは占いの道具「占風鐸(せんぷうたく)」で、音の鳴り方によって物事の吉凶を占っていたという。これが「風鐸」として仏教とともに日本に伝来。「風鐸」の音が聞こえる範囲は、災いを運ぶ風から守ると信じられ、魔除けとして寺院の四隅に吊るされていた。それを平安貴族たちが自分の家に吊ったのが風鈴の始まりといわれる。

夏に涼しさを感じるための道具となったのは、江戸時代になってからだ。もともと風鈴は、鐘の部分が金属製のものだったが、江戸時代中期には、ガラスがオランダ経由で伝わると、びいどろ製の風鈴が流行した。

境内の各所に風鈴を吊るす、おふさ観音「風鈴まつり」 境内の各所に風鈴を吊るす、おふさ観音「風鈴まつり」

風鈴まつりは毎年夏になると各地で行われている。奈良県橿原市にある高野山真言宗 別格本山 おふさ観音でも、毎年7月1日から8月31日まで、「風鈴まつり」を開催。これは、風鈴の音色が災いを払うことから、平成15年(2003年)に始められた催しだ。境内の各所に吊り下げられた約2500個、江戸風鈴、小田原風鈴、南部風鈴など、約90種類もの風鈴が風に揺られ、涼やかな音を奏でる様子は迫力満点だ。期間中は、日本各地の風鈴即売会や、展示会も開催し、大和の夏の風物詩として毎年多くの人が訪れる。

見た目もシンプルで美しい「奈良風鈴」 見た目もシンプルで美しい「奈良風鈴」

「風鈴まつり」では、さまざまな種類の風鈴を楽しむことができるが、この地方で造られた「奈良風鈴」の音色はぜひ聞いてみたい。平成11年(1999年)に風鈴づくりが企画され、誕生した「奈良風鈴」は、ガラスも奈良の重要な文化だと語った当時の東大寺二百十五世別當上司永慶さんが名付け親となり、奈良のガラス作家新倉晴比古さんが製作した。

ワイングラスをさかさまにしたような鐘の形が特徴で、乾杯したときの音のような、明るい音が響く。また、古くから奈良の社寺や祭りで使用されていた色で、奈良らしさを表現。短冊の文字も上司永慶さんによるものだという。奈良の歴史の重みが詰まった「奈良風鈴」の音色は、涼しさを感じるだけでなく、華やかな楽しい気持ちにさせてくれる。

厄除けとして普及した風鈴。この時期、風鈴の音色で、心安らぐひと時を過ごしてみたい。

※「風鈴まつり」の開催情報など、掲載の情報は変更となる場合があります。

協力・写真=高野山真言宗 別格本山 おふさ観音 文=磯崎比呂美
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