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大島紬の魅力を伝える大島紬村

トラベル&ライフ 取材こぼれ話
2021年05月31日
カテゴリー
国内旅行
旅行記

トラベル&ライフ2021年6-7月号の特集で取材した大島紬。熟練した職人たちの手で作られる高級絹織物で、奄美大島が誇る日本を代表する伝統工芸品でもある。その製造工程を見学できるのが、龍郷町にある大島紬村。大島紬の織元が運営する施設だ。

大島紬

大島紬の魅力のひとつが、独特の深みのある黒色。その色を出すために、泥染めという手法を用いているのは知られているが、実はその前にシャリンバイ染めという工程がある。

シャリンバイ、幹のチップを煮だす、煮だしてできた染料 (左から)シャリンバイ、幹のチップを煮だす、煮だしてできた染料

シャリンバイはバラ科に属する灌木で、亜熱帯地方の山野や海辺に自生する植物のこと。この木の幹をチップにして約20時間煮詰めて染色液を作り、まずはそれで糸を染める。20回染めたら、その後に泥染を1回行う。これを1セットとして、4回繰り返すのだ。

泥染め

泥染め

シャリンバイのタンニン酸と泥の鉄分が化合して、独特の艶やかで渋みのある黒に染め上がる。そのため、泥染めの泥田もどこでもいいというわけではなく、鉄分を多く含んでいることが重要になる。ちなみに、回数による色の違いは下記の写真の通り、歴然だ。こうした手間暇をかけて、大島紬特有の黒色は生まれる。
また泥染めを行うことで、着物がしわになりにくい、静電気発生を抑えるなど、着用した時にうれしい利点が得られるのも見逃せない。

大島紬の回数による色の違い

染め上げた糸を織り、柄を仕上げる手織り

染め上がった糸を織り、最終的に美しい反物に仕上げる工程が手織りだ。
「昔は、女の子は母から織り方を教わったものです。私も子どもの時から織っているからもう60年以上。湿度や気温で糸は収縮するので、1本1本糸を掬いながら調整します。きつ過ぎず、緩すぎず、同じ調子で織り進めていくことが大切。これはもう経験ですね」と60年以上の経験を持つベテランの織り子さん。
「昭和20年頃は、娘が二人いたら御殿が建つと言われた時代です。今はそういう時代ではなくなりました。でも、こうして織るのは楽しいですし、好きなんです」と笑う。

大島紬手織り

大島紬手織り

軽くて丈夫な大島紬は着物愛好家の憧れでもある。着物を着る機会が少なくなった昨今は、日常生活に大島紬を取り入れてもらおうと様々な商品を手がけている。男性物のシャツやネクタイをはじめ、女性用のバッグ、ストール。さらにはテディベア、マスク、ブックカバーなど実に多彩で、大島紬が身近に感じられる。着付け体験もある(現在はコロナ禍のため休止)ので、袖を通してみればより深く大島紬の魅力を実感できるに違いない。

大島紬を取り入れた様々な商品

文=木村 理恵子 写真=椋尾 詩
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