台湾南部の都市、台南の北側に位置する菁寮(ジンリャオ)という街では、まるで昭和にタイムスリップしたような、ノスタルジックな風景に出合うことができます。昔ながらの雑貨店や、長年庶民に愛され続ける名物のごはん屋さん、街のランドマークになっている教会など...のどかな田園風景を楽しみながら、のんびりと散策してみました。
風光明媚な米どころとして有名な台南の後壁区に位置する菁寮。2005年にこの街を舞台にした「無米樂」というドキュメンタリー映画が公開されると、その名を広く知られるようになりました。後壁のメインストリートである菁寮老街(ジンリャオ ラオジエ)は、台鉄後壁駅を降りてタクシーで10分ほどのところにあります。伝統的な三合院造りの建物が多く残るこのストリートは、寝具や台所用品などの嫁入り道具をそろえるのに事欠かないことから、別名「嫁妝(嫁入り道具)老街」とも呼ばれてきました。古き良き台湾...そんな言葉がしっくりくる菁寮老街の周辺で、気になったスポットをいくつかご紹介します。
台湾で古くから「おばあちゃんの買い物バッグ」として親しまれている「茄?袋」。茄?工坊は、その茄?袋を一つひとつ手作りで作っているお店です。日本統治時代も終わる頃、農作業の傍ら作られるようになり、当初はイグサを原料として作られていたそうです。しかし現在は、赤や青、緑を定番カラーとしたナイロンメッシュのものが主流となっていて、古民家を改装したレトロな雰囲気漂う店内には、バッグ以外にもペンケースやドリンクホルダー、小銭入れなどなど、多種多様な商品が所せましと並んでいます。
茄?工坊
住所:台南市後壁區菁寮里73號
営業時間:8:00~17:00、無休
富貴食堂では「割稻飯」と言う、米どころならではの名物ごはんが楽しめます。直訳すると「稲刈りめし」となる割稻飯は、猫の手も借りたいほどの忙しさとなる、お米の収穫期に、田んぼと家を往復して食事をするのは大変とのことから、家で家事をしているお母さんが、アツアツのおかずとごはんを田んぼへ持って行ったことに由来するそうです。この食堂のメニューは割稻飯のひとつのみ。アツアツのご飯の上には、じっくり煮込まれた豚バラと湯葉、それに青野菜とタケノコが載っています。シンプルながら、どこか懐かしさを感じる味です。
富貴食堂
住所:台南市後壁區7-2號
営業時間:11:00~14:00、月曜休み
菁寮老街を少し離れると、のどかな田園風景の中に突如メタリックなピラミッドが現れます。実はこちら、れっきとした教会で60年以上もの歴史があります。設計を手掛けたのは、建築界のノーベル賞との異名を持つプリツカー賞の受賞であるドイツの建築家、ゴットフリート・ベーム氏です。土日祝日は一般開放されていて、神聖な雰囲気の館内を見学することができます。また、毎週日曜の朝にはミサが行われています。
菁寮天主堂
住所:台南市後壁區墨林里菁寮294之1號
後壁の住所表記は、通り名+番地と表す都市部のそれとは違い、区画に番号がふられているため、住所だけではたどり着けず、マップが欠かせません。ですが、こののんびりとした時間の流れる街を歩いていると、あえて迷子になってみるのもいいかな...そう思わせてくれるような街歩きでした。
※掲載の情報は、2021年3月現在の情報です。内容は変更となる場合があります。