トラベル&ライフ2021年4-5月号の特集「みちのくの達人たち」で紹介した奥入瀬自然観光資源研究会の玉川えみ那さん。奥入瀬で「コケさんぽ」のガイドを務めている。取材は実際に「コケさんぽ」を体験し、苔を通した奥入瀬観光に関してお話を聞くという予定だった。
取材当日、待ち合わせ時間は13時。しかし、この日は朝から雨...。天気予報を見ると午後は晴れという予報が出ているものの、いっこうに止む気配が感じられず、それどころか徐々に雨脚が強くなるばかり。待ち合わせ時間が近づくにつれ、雨の中で取材できるのか?! 写真は撮れる?!と焦りと不安が募ってくる。ところが!なんと12時30分を回った頃から雨が弱まり、13時には太陽さえ顔を出してくれたのだった。
雨に濡れて瑞々しいクサゴケ
「雨上がりは苔にとってはベストコンディションです。普通の観光なら晴れていないと残念に思うでしょうけれど、苔を見に来たのなら雨は雨でいいですよ。雨上がりはもちろん、しとしとと小雨が降っている時は苔日和。絶好のコンディションです」と笑顔で話す玉川さん。
その言葉通り、苔のイキイキした姿を収めた一枚が上の写真。クサゴケがたっぷりの水分を吸収して瑞々しいこと!水滴を湛えているのは雨上がりならではだ。
葉状体が蛇の鱗を思わせるジャゴケ
ネズミの尾っぽに似ているネズミノオゴケ
現在、日本にある苔は1800種ほどで、奥入瀬で見られる苔は約300種。本誌でも紹介した通り、葉状体が蛇の鱗を思わせる「ジャゴケ」、ネズミの尾っぽに似ていることからその名がついた「ネズミノオゴケ」など、名前も形も個性豊か。ただ、まだまだ名前が分からないものも数多くあるという。
日本蘚苔類学会では、これから先も苔が生育する風景や環境を残していきたいという想いを込めて、苔が美しい場所や種類が豊富な地、珍しい種類が見られるところなどを「日本の貴重なコケの森」に指定している。全国で29カ所(2021年3月現在)あり、その中でも特に貴重で有名な景勝地の3カ所を苔の三大聖地と呼んでいる。
コケ愛にあふれるガイドの玉川えみ那さん
「苔の三大聖地は青森の奥入瀬、長野の北八ヶ岳、鹿児島の屋久島です。北八ヶ岳の白駒池付近には500種以上、屋久島には600種以上の苔があります。苔に着目しながら、いろいろな場所を巡ってもらえたらうれしいですね」と玉川さん。
苔という観点で日本各地を巡ると、新たな魅力に出会えるに違いない。