グルメの宝庫として知られる台湾には、「市」と名の付く3つの台所が存在します。朝早くから肉や野菜などの食材を売っている「朝市」に、お総菜を多く取り扱う午後の市場「黄昏市場」、そして、B級グルメ屋台や雑貨の露店がずらり軒を連ねる「夜市」です。それぞれ違った特徴を持つ3つの「市」ですが、台湾の南部に位置する台南には、その朝市と夜市が融合したような、ちょっと変わったスポットがあります。
「友愛市場」と言うその市場は、2019年にオープンした「台南市美術館2館」のすぐそばにあります。友愛街という通りに面するコンパクトな市場ながら、その歴史は約70年以上にもなる伝統朝市です。肉や魚など新鮮な食材はもちろん、加工食品や雑貨などのお店も並び、ちまきで有名なお店などもあります。
そんな、地元民から長年愛され続けている「友愛市場」が、夜の顔を持つようになったのは、今から2年ほど前のこと。きっかけとなったのは、ボリュームたっぷりの多国籍ごはんを提供する「有愛市場」というお店でした。オーナーの女性は、たまたまこの近くでお茶をした帰り道にこの市場を見つけ、ここにレストランをオープンさせることを決意したそう。お店の名前は市場の「友」を同じ発音である「有」ともじり、「有愛市場」と名づけられました。これを皮切りに、ポツポツとユニークなお店が集い始め、次第に夜の市場は、新しさと懐かしさとが同居する不思議な空間へと変化していきました。お客さんの間でも、朝市で夜ごはんが食べられる...そんなうわさが口コミで広がっていき、静まりかえっていた夜の市場は、次第ににぎやかになっていったのです。
残念なことに、火付け役となった「有愛市場」は、その後閉店してしまったのですが、代わって新しいお店が続々と増えつつあります。こちらは、日本人オーナーが営む無国籍料理のお店「気紛れ」の一品。濃厚なチェダーチーズがとろける「チキンとズッキーニのリゾット」、お値段160元(約560円)です。ホテルのレストランレベルの料理がリーズナブルにいただけるとあって、食事時にはたくさんの人が、入れ替わり立ち替わりやって来ます。
市場内にはそのほかにも、香ばしい香りを漂わせるベルギーワッフルのお店「靄林」や、ちょっと辛い台湾風煮込みが楽しめる「顏九年」、それに本場の香港スイーツのお店「屋企屋企」などなどが並び、一度にいろいろな国の料理を楽しむことができます。また、お酒を取り扱うお店もいくつかあるので、居酒屋気分で何軒かハシゴ...なんていうお客さんの姿もあったりします。
夜の「友愛市場」は、他の仕事と掛け持ちで営業しているオーナーさんが多いので、平日はお休みで週末のみ営業というお店が少なくありません。営業日と営業時間は、各店によって異なりますが、だいたい18時ごろからオープンするお店がほとんどです。
友愛市場
台南市中西區友愛街117號