2月の中旬頃になると、茨城県水戸市にある「偕楽園」の梅が咲き始め、園内は美しい風景と芳しい香りに包まれる。
「偕楽園」は、金沢の「兼六園」、岡山の「後楽園」とともに数えられる日本三名園のひとつ。天保13年(1842年)、水戸藩第九代藩主徳川斉昭が「領内の民と偕(とも)に楽しむ場にしたい」と願い、千波湖に臨む七面山を切り開き「偕楽園」を造設した。また、前年に創設された「藩校弘道館」を藩士たちの勉学・修行の場としたのに対し、「偕楽園」は休息の場として作ったといわれている。
田鶴鳴広場から見た好文亭
また、古くから「偕楽園」は梅の名所としても知られている。当時、大名庭園では梅が好んで植えられていたが、これだけの梅を植えたのは、梅は花が咲いてその姿や香りを楽しませてくれるだけでなく、果実としても食べることができ、梅干しにすれば保存ができ軍事のときの非常食にもなるからだという。激動の時代の前に、梅の美しさだけでなく実用面にも着目した斉昭ならではの発想だった。当時斉昭公は梅の少なかった水戸へ江戸からわざわざ実を送ったという。
たくさんの梅が咲き誇る東西梅林
現在、偕楽園の敷地内には約3,000本の梅が植えられ、2月中旬から3月下旬まで早咲き、中咲き、遅咲きの梅を長期にわたって楽しむことができる。梅の種類は梅干に適しているとされる「白加賀」約400本を中心に、約100種類。白梅と紅梅が7:3の割合で植えられている。
中でも「烈公梅(れっこうばい)」、「白難波(しろなにわ)」、「虎の尾(とらのお)」、「月影(つきかげ)」、「柳川枝垂(やながわしだれ)」、「江南所無(こうなんしょむ)」は、花の形・香り・色などが特に優れていることから、昭和9年(1934年)に「水戸の六名木」に認定。六角形の竹垣に囲まれているのでぜひ探してみたい。
2月下旬~3月中旬に見ごろを迎える「輪違い」
梅が見ごろを迎える2021年2月13日(土)~3月21日(日)には、「偕楽園」と「弘道館」を会場に「水戸の梅まつり」を開催。偕楽園を光のアート空間に変える「チームラボ偕楽園光の祭」をはじめとするさまざまなイベントが行われる予定だ。※
(2021年3月1日更新:令和3年「水戸の梅まつり」は、2021年3月1日(月)~3月21日(日)に変更となりました。今後の情報について、詳しくは公式サイトをご覧ください。)
寒さにも負けず花開き、いち早く春の訪れを知らせてくれる梅。その美しさは人の心を癒し、また力強さは心に元気を与えてくれるはずだ。