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信州飯田の老舗蔵「丸昌稲垣」の挑戦

にほんグルメ探訪
2020年12月15日
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国内旅行
旅行記

築130年の古民家を移築した丸昌稲垣の本店 築130年の古民家を移築した丸昌稲垣の本店

まもなく創業100年を迎える、信州飯田の味噌・漬物蔵の老舗「丸昌稲垣」が、2020年11月に新ブランド「かもしみ」を立ち上げた。「かもしみ」とは、「信州のひとと自然が醸(かも)し出す、身体に沁(し)みわたるおいしさ」という意味。
"利便性の追求や担い手不足により失われつつある長野の発酵食への情熱と技術を残していきたい。いまなら、まだそれが間に合う"という社員たちの思いから誕生した。製品は昔ながらの製法や地元の素材にこだわった野沢菜や味噌、甘酒など、どこかなつかしさを感じる信州の味わいばかりだ。風味が生きた本来の美味しさを届けるためにオンラインショップ限定で販売している。

新ブランド「かもしみ」シリーズ 新ブランド「かもしみ」シリーズ (左から)「中千成天地がえし信州まろやか糀味噌・信州コク香り味噌」、「のんびり熟した野沢菜漬け」、"夜専用"生甘酒「よるしみ」

「かもしみ」シリーズは、食べるときのタイミング、食のシーンまでを考えて商品を開発しているという。今回紹介する商品の一つ「よるしみ生甘酒」は夜専用の甘酒。原料は信州の米と水だけで、砂糖・添加物・アルコールを一切含まず、雑味がなく飲みやすい味わいが特長。また、程よいとろみがあり、ほのかな甘さと香りが、身体をじんわりと温め、心地よい眠りへと導いてくれる。昨今の甘酒ブームではなく、昭和40年代後半より甘酒を作り続けている丸昌稲垣だからこそできる、これまでにない甘酒だ。

信州アルプスの地下水で、時間をかけて煮熟す丸昌稲垣の味噌 信州アルプスの地下水で、時間をかけて煮熟す丸昌稲垣の味噌

丸昌稲垣は、創業は大正14年(1925年)、味噌と醤油の醸造業からスタートした。昭和23年(1948年)の飯田の大火で店舗が消失するも、新工場と本店をいちはやく再建。戦後は味噌や醤油だけでなく、味噌を使った漬物も販売し、昭和26年(1951年)には、東京へも進出しアメリカから上陸したばかりのスーパーマーケットにおいて、個包装した味噌や長野の伝統的な漬物である野沢菜の販売を行い、ナショナルブランドに成長した。

「稲垣来三郎匠」の「信州飯田ねぎだれ」は大ヒット商品に 「稲垣来三郎匠」の「信州飯田ねぎだれ」は大ヒット商品に

平成8年(1996年)には、「原価が高くなっても産地や製法にこだわっておいしさを追求する」をコンセプトとしたブランド「稲垣来三郎匠」を立ち上げ、産地や製法だけでなく、パッケージやデザインにもこだわった商品を販売。なかでも、現在の社長である稲垣勝俊氏が考案した「信州飯田ねぎだれ」は大ヒット商品となった。飯田ではおでんにねぎだれをつけて食べていたが、それまで各家庭で作り、市販で売られているものがなかった。「信州飯田ねぎだれ」は、そのおいしさはもちろんのことドレッシングボトルに入れることにより手軽に使えると好評を得て、「飯田おでん」の名前とともに、全国的にその名を知られるようになった。

常に新たな挑戦をし続ける味噌・漬物蔵の老舗、丸昌稲垣。ここで作られている信州の味には、「本当によいものを作っていきたい。郷土の味を後世に残していきたい」という作り手たちの強い思いが息づいている。

写真提供=丸昌稲垣 文=磯崎比呂美
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