福井県の味覚といえば・・・「越前がに」。多くの人がそう答えるだろう。ズワイガニのトップブランドとして知られる越前がにが今年も解禁となり、越前漁港をはじめ三国港・敦賀港・小浜港など、福井県で水揚げされている。と同時に、これからは越前がれいがおいしい季節。今回は、越前がにに続くブランドとして注目されている越前がれいを紹介しよう。
越前漁港での水揚げ量が多いため越前がれいと名付けられた
越前がれいとは、福井県で水揚げされるアカガレイのことだ。水深150~500m、水温5度以下の海底に生息し、口が大きく、体色は赤褐色。新鮮なものほど赤い斑点が濃く、独特のぬめりがある。身が引き締まっており、高級ブランドとして知られる若狭がれい(ヤナギムシカレイ)よりも味が濃厚だ。漁が行われるのは、底曳き網漁が解禁となる9月からで、11~2月頃のものはお腹に子(卵)をもち、特においしいといわれる。
地元の人でもなかなか食べられなかった「地がれい」の刺身
越前がれいは越前町では「地がれい」とも呼ばれ、手ごろな価格で一般の家庭でもよく食べられている。鮮度が落ちやすいため、焼き物、煮物、揚げ物、または干物にして食べるのが一般的だが、越前がれいの刺身は「ヒラメよりもおいしい」といわれるほどだ。
「このおいしさを知ってもらいたい」越前の漁業者は鮮度を保ったまま流通させる方法を試行錯誤してきたが、近年、越前がれいを活魚で港に持ち帰り、「活締め」「神経抜き」を漁業者自らが行うことにより、豊洲市場などへの出荷も可能になった。
また、禁漁期間中は、海底の堆積物を混ぜて、プランクトンの繁殖を促す「海底耕転」を行うなど、越前がれいの生息環境を維持するための取り組みを行い、越前がれいの育成にも力を入れている。
高鮮度の刺身は身が白く透き通り、こりこりとした食感で淡白な味わいの中に甘味もある。まさに絶品。地元漁業者たちの想いが詰まった味と思うと、また感動もひとしおだ。
日本海の潮風にもまれて育つ「越前水仙」は、茎が太く凛として日持ちもよい
また、雄々しい風景が続く越前海岸は、兵庫県淡路島、千葉県房総半島とともに日本水仙三大群生地のひとつに数えられている。その面積は60~70haと日本最大。毎年12月~1月ごろの開花シーズンになると、斜面一面に咲き誇る可憐な花々、甘く爽やかな香りが出迎えてくれる。生花としても人気が高く、関西をはじめ、関東圏にも出荷されているという。
これからの季節、ますます楽しさ満載の福井県越前町。ぜひこの味わいと花の香りを堪能したい。