トラベル&ライフ2020年10-11月号の巻頭特集は九州。その取材の一環で、鹿児島の仙巌園を訪ねた。江戸時代初期に築かれた、薩摩藩主島津家の別邸である。鹿児島空港からレンタカ-で約40分。ここでは、仙巌園ならではの薩摩藩の歴史と文化の粋を紹介しよう。
仙巌園は桜島を借景としている。広大な庭園の眼前には、鹿児島のシンボル桜島が堂々たる姿を見せている。今もなお活発な火山活動を続けているが、実は取材から帰った2日後の8月9日にも噴火が発生し、噴煙は火口上5000mに上昇した。
仙巌園内に立つ御殿は幕末明治には迎賓館となり、国内外の賓客が訪れた。最後の藩主となった島津忠義も、明治30年に亡くなるまでここで暮らしていたという。写真は、御殿の中庭。枯山水と池泉庭園が融合した風情あふれるたたずまいだ。
御殿内に展示されているのが、薩摩焼の蓋付きの大きな壷。高さは約90cm。明治29年、当時のロシア皇帝ニコライ2世の戴冠式の際、島津家から贈ったものの複製だ。正面にはロシア皇帝の王冠が描かれている。
尚古集成館も見逃せない。建物は現存する日本最古の洋式機械工場で、現在は島津家に伝わる貴重な文化遺産を紹介する博物館となっている。写真は、赤糸威大鎧(手前)と牡丹唐草丸十紋蒔絵女乗物(左奥)。
尚古集成館で見つけたのが、文久3年(1863)の薩英戦争当時の薩摩側とイギリス側の砲弾。薩摩側の砲弾は球形で、導火線で爆発させるものと、爆発しない鉄の固まりのものとがあった。イギリス側の砲弾は椎の実形で、頭部に衝撃で爆発する着発信管が付いていた。